お米の生産量はなぜ減っているの?
日本の主食であるお米ですが、実は生産量が年々減少しているのをご存じでしょうか?
2024年(令和6年)の主食用米の生産量は約679万トンと見込まれており、ここ数年で確実に減少傾向にあります。
2017年には782万トン以上あったのに対し、2023年には716.6万トン、さらに今年は700万トンを下回る見通しです。
一方で2024年の生産量は、需要(674万トン)をやや上回るため、「足りなくなることはなさそう」と思うかもしれません。でも、2023年のように生産量が需要を大きく下回る年には、首都圏や関西でスーパーからお米が消えるなど、ちょっとしたパニックも起きていました。
お米の価格、なぜここまで上がったの?
かつては「お手頃な食材」の代表だったお米ですが、近年は価格上昇が止まりません。
以下は60kgあたりの相対取引価格の推移です:
年度 | 相対取引価格(60kg) |
---|---|
2021年産 | 12,804円 |
2022年産 | 13,844円 |
2023年産 | 15,306円(7月時点で15,626円) |
2025年5月 | 27,649円(最新価格) |
家庭に直結する5kgパックの小売価格も、2024年春には3,000円を超え、2025年5月には平均4,233円に。
前年のおよそ2,000円からなんと倍増。食卓にじわじわと打撃を与えています。
流通量と在庫の関係とは?
実は、お米の価格が高騰している背景には「在庫の減少」も深く関係しています。
民間在庫や政府が備蓄する米の量がここ数年で減少し、2024年には前年同月比で約40万トンも少ない状況に。
価格の安定を目的に、政府は備蓄米の市場放出なども行っていますが、突発的な需要の増減にはすぐには対応しきれないのが現状です。
豊作と不作、それぞれの原因とは?
お米の生産量を左右するのは、やはり「天候」。近年は気候変動の影響がますます大きくなっています。
豊作の要因
- 日照や降水が適度で安定している年
- 地球温暖化により、冷害のリスクが減った北日本では収穫量が上がる傾向
- CO₂濃度の上昇により光合成が活発になり、増収に寄与するケースも
不作の要因
- 異常気象(冷夏、猛暑、台風、長雨など)
- 特に猛暑による「高温障害」では、お米の粒が白くなったり割れたりして品質が落ちます
例として2023年、新潟では猛暑とフェーン現象の影響で、コシヒカリの一等米比率がわずか4.9%にまで低下。ブランド米でも品質低下が顕著でした。
不作の年、価格と流通はどう変わる?
以下のような関係が見られます:
状況 | 生産量 | 価格 | 流通量 | 備考 |
---|---|---|---|---|
豊作 | 増える | 下がる | 増える | 需要が伸びず価格下落(豊作貧乏) |
不作 | 減る | 上がる | 減る | 供給不足。備蓄米放出や輸入で対応 |
品質低下 | 横ばい〜減少 | 上がる | 減る | 一等米不足で価格上昇 |
お米は「非弾力的」な食料なので、少しの供給不足でも価格が大きく動いてしまいます。1993年には大冷夏により「米騒動」が発生し、259万トンも海外から緊急輸入されました。
政府や業界の取り組みは?
- 備蓄米制度
約100万トンを目安に政府が米を保管し、不作や災害時に市場に放出します。 - 減反政策(生産調整)
長年にわたり過剰生産を防ぐために行われ、2018年に廃止されましたが、現在も補助金などで実質的な作付け抑制は続いています。 - 市場の安定化策
政府の価格調整や流通管理、農協(JA)や流通業者との連携も重要な役割を担っています。
まとめ:わたしたちの“ごはん”のこれから
お米は日本の食文化を支える存在ですが、その背景では、生産量の減少や気候変動による品質低下、需給のズレなど、さまざまな課題が進行しています。
日々の食卓で食べる一杯のごはん。その値段が上がる裏側には、日本の農業と気候、そして社会全体の動きが影響しています。これからも「おいしいお米」を食べ続けるためには、私たちも少し意識を向けてみることが大切かもしれません。