しょうゆ・みりん・だしは「種類」で仕上がりが変わる
レシピの「しょうゆ大さじ2」は、どのしょうゆかで別の料理になります。しょうゆはJAS規格で5種類、みりんは法律上まったく別の3つの商品に分かれ、だしはうま味成分の系統が違います。
この一覧は公的な基準にもとづいています。しょうゆは日本農林規格(JAS)、みりんは酒税法の区分、だしはうま味成分の研究です。
しょうゆ(JAS規格の5種類)
意外な事実をひとつ。「薄口」は薄味ではありません。淡口しょうゆの塩分は19.1%で、濃口の17.5%より高いのです。色と香りを抑えるぶん、食塩を多く使います。
濃口しょうゆ 標準
塩分 17.5% 主な地域: 関東・全国 根拠: しょうゆの日本農林規格(JAS)
国内出荷量の約84%を占める標準のしょうゆ。塩味に加えてうま味・甘味・酸味・苦味を併せ持つ。関東の煮物や焼き物の基準になる。
代用するとどうなるか。淡口に置き換えると色は薄くなるが塩分は上がる(17.5%→19.1%)。同量では塩辛くなるため、量を減らす必要がある。
向く料理: 煮物、焼き物、つけだれ全般
淡口しょうゆ
塩分 19.1% 主な地域: 関西 根拠: しょうゆの日本農林規格(JAS)
色と香りを抑えたしょうゆ。関西の標準。色をつけずに味を決めたい料理に使う。「薄口」と書くが薄味という意味ではない。
代用するとどうなるか。濃口に置き換えると色が濃く出る。だしの色を残したい吸い物や炊き合わせでは仕上がりが別物になる。逆に淡口を濃口と同量使うと塩辛い。
向く料理: 吸い物、炊き合わせ、色を残したい煮物
たまりしょうゆ
塩分 17.9% 主な地域: 中部 根拠: しょうゆの日本農林規格(JAS)
原料がほぼ大豆で、小麦をごく少量しか使わない。とろみと濃い色、強いうま味が特徴。中部地方で作られる。
代用するとどうなるか。濃口に置き換えるととろみと照りが出ない。刺身や照り焼きでは見た目と絡みが変わる。
向く料理: 刺身、照り焼き、佃煮
再仕込しょうゆ
塩分 15.6% 主な地域: 中国・九州 根拠: しょうゆの日本農林規格(JAS)
仕込みに食塩水ではなく生揚げしょうゆを使う二度仕込み。5種のなかで塩分が最も低く、色と味が濃い。
代用するとどうなるか。濃口で代えると濃厚さが出ない。卓上で少量かけて使う場面向きで、加熱調理の基準にはしにくい。
向く料理: 刺身、冷奴などのかけしょうゆ
白しょうゆ
塩分 17.9% 主な地域: 中部 根拠: しょうゆの日本農林規格(JAS)
小麦を主原料とし、5種で最も色が淡い。琥珀色で甘い香りを持つ。愛知県碧南が産地。
代用するとどうなるか。淡口よりさらに色が出ない。素材の色をそのまま見せたい料理でのみ意味がある。濃口では代替できない。
向く料理: 茶碗蒸し、白い煮物、吸い物
みりん(法律上は別の商品)
本みりんは酒税法上の「酒類」で、アルコール約14%。みりん風調味料はアルコール1%未満の別物です。値段の差は、はたらきの差でもあります。
本みりん 標準
アルコール 約15% 主な地域: 全国 根拠: 酒税法上の酒類
もち米・米麹・焼酎を長期間かけて糖化熟成させたもの。アルコール13.5〜16.5%。酒税法上は酒類にあたり、20歳未満は購入できない。
代用するとどうなるか。みりん風調味料に置き換えると、アルコールによる臭み消しと煮崩れ防止の作用が失われる。甘みだけが残るため、魚の煮付けや肉じゃがでは仕上がりが変わる。
向く料理: 煮物、照り焼き、魚の煮付け
みりん風調味料
アルコール 1%未満 主な地域: 全国 根拠: 酒類には該当しない(アルコール1%未満)
糖類・米・米麹・うま味調味料などを短期間で調合したもの。アルコール1%未満のため酒税がかからず安価。
代用するとどうなるか。本みりんの代わりに使うと、臭み消し・煮崩れ防止・照りの出方が変わる。甘みをつけるだけなら足りるが、加熱でアルコールを飛ばす前提の料理には向かない。
向く料理: 火を使わない和え物、甘みだけを足したい場面
発酵調味料(みりんタイプ)
アルコール 約10% 主な地域: 全国 根拠: 食品衛生法上の表示は「発酵調味料」
アルコールを含むが、塩を加えて飲用できないようにしてある。そのぶん酒税がかからない。塩分があるのが本みりんとの違い。
代用するとどうなるか。本みりんの代わりに同量使うと、料理全体の塩分が上がる。しょうゆや塩の量を減らして調整する必要がある。
向く料理: 業務用の煮物、たれ
だし(うま味成分の系統で選ぶ)
かつお・煮干し・干ししいたけは核酸系、昆布はアミノ酸系。系統の違うだしを合わせると、うま味は足し算ではなく掛け算のように強まります。合わせだしがおいしい理由です。
かつおだし 標準
うま味成分: イノシン酸(核酸系) 主な地域: 関東
かつお節からとるだし。香りが立ち、うま味成分はイノシン酸。関東の汁物・煮物の基準。短時間で引ける。
代用するとどうなるか。昆布だしに置き換えると香りが立たず、うま味の系統も変わる。かつおの香りが主役の吸い物では代替にならない。
向く料理: 吸い物、そば・うどんのつゆ、煮物
昆布だし
うま味成分: グルタミン酸(アミノ酸系) 主な地域: 北海道・関西
昆布からとるだし。香りは控えめで、素材の味を引き立てる。うま味成分はグルタミン酸。関西の標準。精進料理にも使える。
代用するとどうなるか。かつおだしに置き換えると香りが強く出て、素材の繊細な味が隠れる。湯豆腐や炊き合わせでは方向が変わる。
向く料理: 湯豆腐、炊き合わせ、精進料理
合わせだし(かつお+昆布)
うま味成分: イノシン酸+グルタミン酸(相乗効果) 主な地域: 全国
かつおと昆布を合わせたもの。アミノ酸系と核酸系のうま味は足し算ではなく掛け算のように強め合う。両者の濃度が等しいときに効果が最も大きいという研究がある。
代用するとどうなるか。どちらか一方だけにすると、うま味の相乗が働かず全体が薄く感じる。だしの量を増やしても同じ厚みは出ない。
向く料理: 味噌汁、煮物、茶碗蒸し
煮干しだし(いりこだし)
うま味成分: イノシン酸(核酸系) 主な地域: 中国・関西・九州
かたくちいわしの煮干しからとるだし。うま味成分はかつおと同じイノシン酸だが、魚の風味が強く残る。西日本では「いりこ」と呼ぶ。
代用するとどうなるか。かつおだしに置き換えると上品になるが、味噌汁の力強さは失われる。逆に吸い物に使うと魚くささが立つ。
向く料理: 味噌汁、うどんつゆ、煮物
干ししいたけだし
うま味成分: グアニル酸(核酸系) 主な地域: 全国
干ししいたけの戻し汁。うま味成分はグアニル酸で、かつおや煮干しと同じ核酸系。動物性の材料を使わないため精進料理に使える。
代用するとどうなるか。かつおだしに置き換えると精進ではなくなる。含め煮や巻き寿司の干瓢では、しいたけ特有の香りが欠ける。
向く料理: 精進料理、含め煮、ちらし寿司
この知識の使いどころ
定番の家庭料理の各ページに、この違いをふまえた「アレンジ」を載せています。同じ肉じゃがを薄めにも濃いめにも振れます。旬の食材は旬カレンダーでどうぞ。
この記事を参照する場合
本記事を引用・参照される際は、出典として下記をご記載ください。
- 記事タイトル: しょうゆ・みりん・だしの違い|種類で仕上がりが変わる
- サイト名: くろねこ味巡り
- URL: https://kuronekoshop.jp/seasoning-guide/
- 一次情報: しょうゆの日本農林規格(JAS)、酒税法、うま味インフォメーションセンター
- 情報確認日: 2026年8月