かつて日本では、お米を「作りすぎないようにする」減反(げんたん)政策という制度が実施されていました。1971年から2018年までの約47年間にわたって行われてきたこの政策は、米の過剰生産による価格下落や在庫の増加を防ぐため、農家に生産量の調整や転作を促すものでした。現在はすでに廃止されていますが、その背景には食生活の変化による消費量の減少、農家の経営安定、国家財政への負担など、さまざまな課題がありました。
本記事では、「なぜ国はお米を減らそうとしたのか?」という素朴な疑問に答える形で、減反政策の成り立ちや目的、補助金制度の仕組み、そして統計で見える成果と課題について、農林水産省などの公的データをもとにわかりやすく解説していきます。
減反政策とは?
減反政策とは、米の作りすぎによる過剰在庫や価格の下落を防ぐため、国が農家に「お米を作らないように」促す制度のことです。始まったのは1971年。戦後の食料不足時代を経て、日本は豊作が続き、米の在庫が余って価格が下がるという状況に。
これを防ぐため、政府は生産量の目標を設定し、農家に転作(麦・大豆・飼料用米などへの切り替え)を促進。協力した農家には補助金が支給されていました。
なぜ米を減らす必要があったのか?
1970年代、日本人の食卓はパンや麺などに多様化していきました。その結果、米の消費量は年々減少。
生産はできるのに消費が追いつかず、米が余って価格が下がる。結果として、農家の収入も不安定に。米の価格と供給のバランスを守るために、「作らせない」政策が必要とされたのです。
補助金制度と農家の対応
減反に協力した農家には、次のような補助金が支給されていました。
- 米の直接支払交付金(例:10アールあたり1.5万円)
- 水田活用の直接支払交付金(大豆・麦・飼料用米などへの転作で最大10.5万円/10アール)
補助金は農家の大きな収入源となっていたため、多くの農家が減反に協力。とはいえ、近年はブランド米への切り替えや農業法人化など、より柔軟な経営を進める動きも見られました。
減反政策の効果と課題
政策の効果
- 1970年:約1,400万トン → 2020年:約650万トンと、生産量が半減。
- 米価の安定、在庫の圧縮、流通コストの抑制に一定の効果。
見えてきた課題
- 供給能力の低下:需給が逼迫すると価格が急騰するリスクあり。
- 補助金依存による農業経営の硬直化。
- 耕作放棄地の増加(2020年時点で約42万ha)や食料自給率の低下(2020年度:37%)。
減反政策の廃止と今後
2018年、減反政策は正式に廃止され、農家は「何をどれだけ作るか」を自分で決める時代に移行しました。
現在は、輸出や米粉、加工用米など、多様な販路への対応がカギになっています。農業経営の自由度が増した今、どれだけ柔軟に市場へ対応できるかが問われています。
参考リンク
「作らないこと」もまた政策だった——そんな日本のお米の背景を、統計とともに知ってみませんか?