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おせち文化・歴史シリーズ④:関東風と関西風のおせちの違いを徹底解説

関東風と関西風のおせち料理は、祝い肴三種、味付け、魚料理、煮物、重箱の詰め方など、様々な点で明確な違いがあります。これらの違いは、気候・流通・歴史的背景や文化(武家と公家)にも根ざしています。さらに現代のおせち商品展開にも東西の特色が反映されています。

比較表:関東風と関西風おせち料理の違い

項目 関東風 関西風
祝い肴三種 黒豆・数の子・田作り 黒豆・数の子・たたきごぼう
味付け 濃口醤油+砂糖、濃く甘め 薄口醤油+だし、素材を活かす
魚料理 新巻鮭(塩鮭) 鰤、睨み鯛、棒だら
煮物 煮しめ(根菜を濃い味で煮る) 薄味の煮物、くわいなど
重箱の詰め方 ぎっしり詰める実用型 見た目を意識し美しく盛る
商品展開 鮭・煮しめ・田作り中心 ぶり照焼・睨み鯛・棒だら中心

祝い肴三種の違い

関東: 黒豆・数の子・田作り。田作りはカタクチイワシを甘辛く煮詰め、五穀豊穣を願う縁起物です。
関西: 黒豆・数の子・たたきごぼう。根の深さから家業安泰を祈り、ごま風味のさっぱりした一品です。

味付けの違い

  • 関東:濃口醤油と砂糖を使い、色濃く味わいも甘めで力強い。
  • 関西:薄口醤油とだしを重視し、素材の彩りや旨みを大切にする淡い味わい。

魚料理の違い

関東は「新巻鮭」が定番。流通や冷蔵技術の発展に伴い正月の象徴に。
関西は「鰤(出世魚)」「睨み鯛(尾頭付き鯛)」「棒だら」が主流で、縁起を担いだ料理が揃います。

煮物・その他の料理

関東: 根菜を濃い味で煮る「煮しめ」が中心。保存性が高く、家族の結びつきも象徴。
関西: 薄味の煮物や「くわい」、京都・大阪では「芋棒」や「紅白なます」など、美意識と上品さを重視。

歴史的・文化的背景

  • 関東:武家文化が影響し、実用性・保存性を重視。濃い味付けが好まれました。
  • 関西:公家・商人文化が基盤で、美しさや繊細さを追求。だし文化や薄口醤油も発展。

気候・流通の影響

関東は寒冷と人口集中により塩蔵品が中心。物流で多様な食材が集まりやすかった地域です。
関西は温暖で食材が豊富、上質な水を背景に「だし文化」が栄えました。

現代のおせち商品展開

近年は百貨店や通販でも「関東風」「関西風」を冠した商品が人気です。
関東風: 鮭・田作り・煮しめを重視し、ぎっしり詰めた重箱。
関西風: 鰤照焼・睨み鯛・棒だらなど、薄味で彩り豊かな盛り付け。
さらに「東西味比べセット」や折衷型おせちも登場し、地域性を楽しむ新たな形が広がっています。

まとめ

関東風・関西風のおせちは、単なる料理の違いを超え、歴史や文化、土地柄までもが反映された祝祭料理です。現代ではその違いを楽しめる「選べるおせち」として、全国の食卓を豊かに彩っています。

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