サメって、ちょっと意外かもしれませんが、日本のあちこちで昔から食べられてきた魚なんです。地域によって料理法や呼び名もバラバラで、サメをめぐる食文化はかなり奥深いものがあります。
この記事では、そんなサメの食材としての特徴や歴史、調理の仕方、そして最近どんなふうに見直されているのかなど、日本国内を中心に、海外のサメ料理とも比べながら紹介していきます。
1. 日本におけるサメ食文化の歴史
古代から食べられていたサメ
サメはなんと縄文時代から食べられていたといわれています。青森の三内丸山遺跡からはサメの骨が見つかっていて、当時の人たちも食べていた可能性があるようです。
その後も、サメの肉は日持ちしやすいことから、冷蔵庫がない時代には内陸の方にも運ばれていたようです。
※注:縄文時代に「保存食」として利用されていたかどうかは、明確な根拠が見つかっていません。
戦後は貴重なたんぱく源に
戦争が終わったばかりのころ、食料が足りなかった時代には、サメは貴重なたんぱく源として重宝されていました。特に山間部では、塩蔵しなくてもある程度日持ちするサメ肉が便利だったそうです。
※注:この時期の具体的な流通量や消費実態についての公的データは未確認です。
冷蔵技術とともに変わるサメの立ち位置
今では冷蔵・冷凍技術が発達して、わざわざ日持ちを重視する必要もなくなりました。その影響もあって、サメ肉の需要は全国的に減ってきています。でも、地域によっては今でも郷土料理として定着しています。
2. 地域ごとのサメ食文化
東北地方(青森・宮城)
- 青森県ではアブラツノザメがよく食べられていて、「飯ずし」や「すくめ」といった郷土料理に登場します。
- 宮城県気仙沼は、サメの水揚げ量が日本一。「モウカの星」と呼ばれるサメの心臓の刺身や、フカヒレ、サメフライ、煮付けなどいろんな料理があります。
- 気仙沼では学校給食にもサメ肉が使われていて、地域の味として根付いています。
山陰地方(鳥取・島根)
- この地域ではサメのことを「ワニ」と呼んでいて、干物や煮付けとして昔から親しまれています。
- 広島の山間部にも「ワニ料理」があり、刺身や湯引きでよく食べられています。
※注:「ワニ」という呼び名の起源や使われ方については資料によって異なり、統一された説明は確認できていません。
瀬戸内海沿岸(岡山・香川)
- 「サメのたれ」と呼ばれるサメの干物が名産品になっていて、昔からの保存食として親しまれています。
九州地方(長崎など)
- サメ肉はすり身やかまぼこなどの練り製品の材料として使われています。
その他の地域
- 栃木県では「モロ」と呼ばれ、煮付けやフライで食べられています。
- 新潟県上越地方では、お正月料理にサメを使った煮こごりや煮付けが登場します。
- 三重県伊勢市・鳥羽市では「サメのタレ(干物)」が昔ながらの食材として残っています。
※注:これらの地域名・呼称・食べ方に関しては、一次資料や郷土史的な裏付けが不足しています。
3. サメの種類と食べ方
よく食べられているサメの種類
- ヨシキリザメ:フカヒレの材料や、かまぼこなどの練り製品に使われます。
- ネズミザメ(モウカザメ):刺身や煮物、フライなど、いろんな料理に使える万能選手です。
- アブラツノザメ:青森で「すくめ」や刺身として食べられるサメです。
- ホシザメ:煮物や揚げ物、湯引きにも使われていて、クセが少なくて食べやすいです。
バリエーション豊かな調理法
- 刺身:新鮮なものは刺身で。青森や広島などでよく食べられています。
- 煮付け・照り焼き:クセがなく淡白なので、煮物にも照り焼きにもぴったりです。
- フライ・唐揚げ:ふんわりした食感が揚げ物に合い、学校給食でも登場することも。
- 干物:「サメのたれ」など、乾物としても保存がきいて重宝されます。
- 練り製品:かまぼこやはんぺん、ちくわなど、加工食品にも幅広く使われています。
- フカヒレ:中華料理の高級食材として有名。特にヨシキリザメのヒレが使われます。
栄養面でも優秀なサメ肉
サメ肉は、低カロリー・高たんぱくで、DHAやEPA、コラーゲン、ビタミンB群も豊富。健康志向の人にもぴったりな魚なんです。
4. サメ食文化の現状と課題
昔ながらの食文化が消えつつある
最近ではサメ肉の流通量が減ってきていて、食文化そのものが失われつつあります。理由としては、冷蔵技術が発達したことや、サメの皮むきなどの技術を持つ職人が少なくなってきたこと、消費者の好みの変化などが挙げられます。
サメの良さが見直されつつある
一方で、栄養面や保存性が再評価されていて、未利用魚を活かした商品開発や、地域おこしの材料として注目されてきています。
5. 世界のサメ食文化との比較
アジアのサメ食文化
- 中国や韓国、インド、スリランカなどでもサメはよく食べられていて、乾燥、燻製、塩漬けなどいろんな加工法があります。
- 日本はサメ肉の輸出入量も多く、アジア圏内での消費が盛んです。
ヨーロッパ
- イギリスやドイツ、フランス、北欧諸国では、ツノザメの酢漬けや燻製が好まれています。
- ドイツでは「Schillerlocken」という燻製サメが伝統食とされています。
- アイスランドでは「ハカール」という発酵サメ肉が国民食になっています。
※注:これらの食文化についての情報は主に一般公開情報によるもので、学術的な裏付けは不足しています。
その他の地域
- オーストラリアでは「フレーク」という名前でフィッシュアンドチップスに使われています。
- アフリカや中南米でも、サメ肉は塩漬けなどで保存され、重要なたんぱく源になっています。
国や地域によって違うサメの評価
アジアや一部ヨーロッパ・オセアニアでは日常的に食べられている一方で、西洋の一部では「下等な食材」と見られていた歴史もあります。でも最近は健康志向や食の多様化もあり、再評価されてきています。
6. サメの副産物と伝統利用
フカヒレ
サメといえばフカヒレ。日本や中国では高級食材として扱われ、特にヨシキリザメのヒレが有名です。
鮫皮
サメやエイの皮は「鮫皮おろし」として生わさびをおろす道具や、装飾、工芸品にも使われてきました。
※注:正倉院に収蔵されている「鮫皮装飾の刀」など、史実としての裏付けはあるものの、工芸品としての流通実態は不明確な点もあります。
肝油・軟骨
サメの肝油は、戦後の栄養補助に使われたこともありました。また、軟骨にはコンドロイチンやコラーゲンが含まれていて、健康食品にも活用されています。
7. サメ食文化の今後
地域の資源としての可能性
サメは栄養価が高く、保存もきく食材なので、地域の特産品として新たな商品や観光資源にもなり得ます。伝統を守りながら新しい展開もできる、ポテンシャルのある魚です。
持続可能な利用のために
ただし、サメの中には繁殖力の低い種類もあり、獲りすぎるとすぐに数が減ってしまうおそれも。これからは、文化を守りながら資源としてもきちんと管理していくことが大切になってきます。
※注:サメ類の持続可能な漁業管理については、IUCNや環境省などの最新データとの照合が必要です。
サメ肉の魅力と地域食材としてのこれから
サメは、日本の食文化の中で長い歴史を持ち、地域ごとに独自のスタイルで食べられてきました。保存がきく上に栄養価も高く、今なお健康食材として注目されています。
最近では食べる機会が減ってきていますが、地域振興やフードロス対策として、もう一度見直されつつあります。世界でもサメ肉は様々な形で利用されていて、これからの時代、サメをどう付き合っていくかが改めて問われているのかもしれません。
追加調査が望ましい点
- 縄文時代における「保存食」としての活用についての考古学的根拠
- 戦後のサメ肉流通量や消費実態の公的データ
- 地域での呼称(例:「モロ」「ワニ」「サメのたれ」)の語源や正確な使用範囲
- 海外のサメ食文化(Schillerlocken、ハカールなど)に関する一次資料
- サメ副産物(肝油、皮、軟骨)に関する工芸・医療分野での最新利用状況
- サメ類の資源管理・持続可能性に関する科学的な報告・データ(IUCN等)