返事が悪くはないのに、なぜか使えない。この回では、ミカさんが「どこが違うか」を言葉にして、頼み直せるようになります。
この回で作るもの
そのまま送れる修正依頼文
AIの返事のどこが合わないかを3点に分けて伝える依頼文を作ります。この形は、これ以降どの回でも同じように使えます。
今回の例
ミカさんが、返ってきた文章を前で止まっている
ミカさんはメモをAIに渡して、記事の一段落を作ってもらいました。返ってきた文章はきれいです。誤字もなく、読みやすい。それなのに、コピーして貼る気になれません。
- ミカさんが渡したメモ
- 「黒ごまソフトを食べた。香ばしい。甘さは強すぎない。野菜売り場が広い。駐車場が混んでいた」
- 返ってきた文章
- 「豊かな自然に囲まれた道の駅で味わう黒ごまソフトクリームは、まさに絶品の一言。香ばしいごまの風味が口いっぱいに広がり、上品な甘さが後を引きます。広々とした野菜売り場には新鮮な地元野菜がずらり。休日は駐車場も満車になるほどの人気ぶりです。」
- ミカさんの感覚
- 間違ってはいない気がするが、自分の言葉ではない。でも、どこが嫌なのかを説明できない
「なんとなく違う」を3つに分ける
ミカさんの違和感は、3つの種類に分けられます。分けられれば、直す場所が決まります。
- 足されたこと — 「豊かな自然に囲まれた」「新鮮な地元野菜」。ミカさんのメモにありません
- 広げられたこと — 「休日は駐車場も満車になるほど」。ミカさんが見たのは、その日の午後だけです
- 言い方が合わないこと — 「まさに絶品の一言」「後を引きます」。ミカさんはそういう話し方をしません
この3つは、直し方が違います。足されたことは削り、広げられたことはその日の話に戻し、言い方は自分の口調に寄せます。まとめて「違う」と伝えるより、3つに分けて伝えるほうが早く直ります。
1回で使える文が出てこないのは普通のことです。むしろ、1回目をたたき台にして直していくほうが、自分の文章に近づきます。何度頼み直しても問題はありません。
AIに任せる部分と自分で見る部分
AIに頼みやすい
- 足された箇所を自分で指摘させる
- 条件を指定して書き直す
- 言い方の候補を複数出す
自分で見る
- どこが自分の感覚と違うかの特定
- 削るか、残すかの判断
- 最後の語尾を決める
進め方
- 返ってきた文章を読んで、引っかかる箇所に印を付ける
- 印を「足された」「広げられた」「言い方」に分ける
- 3点を挙げて頼み直す
- 出てきた文をもう一度読む
- 語尾だけ自分で直す
そのまま使える依頼文
1. 足された箇所を自分で挙げてもらう
私が渡したメモと、あなたが書いた文章を比べてください。
私のメモになかったのに、文章に入っている表現をすべて挙げてください。
私のメモ:
黒ごまソフトを食べた。香ばしい。甘さは強すぎない。
野菜売り場が広い。駐車場が混んでいた。
あなたの文章:
豊かな自然に囲まれた道の駅で味わう黒ごまソフトクリームは、まさに絶品の一言。
香ばしいごまの風味が口いっぱいに広がり、上品な甘さが後を引きます。
広々とした野菜売り場には新鮮な地元野菜がずらり。
休日は駐車場も満車になるほどの人気ぶりです。
出力例
メモになかった表現は次のとおりです。
- 「豊かな自然に囲まれた」 — 周辺の様子はメモにありません
- 「まさに絶品」 — 評価の言葉です。メモは「香ばしい」「甘さは強すぎない」だけです
- 「口いっぱいに広がり」「後を引きます」 — 食べたときの描写を足しています
- 「新鮮な」「地元野菜」 — 野菜の産地と状態はメモにありません
- 「休日は満車になるほど」 — メモは「駐車場が混んでいた」で、休日の話も満車の話もありません
- 「人気ぶり」 — 人気かどうかの判断が入っています
メモの5項目に対して、6か所を追加していました。
2. 3点を挙げて頼み直す
先ほどの文章を、次の3点を直して書き直してください。
1. 足された表現を削る
「豊かな自然」「新鮮な地元野菜」「人気ぶり」は、私が見ていません
2. 広げられた表現を、その日の話に戻す
「休日は満車」ではなく、私が行った日曜の午後に混んでいたという話です
3. 言い方を落ち着かせる
「絶品」「後を引きます」のような言い方は、私は使いません
私のメモにある内容だけで書いてください。
出力例
「道の駅で黒ごまソフトを食べました。香ばしさがあり、甘さは強すぎません。野菜売り場は広く、いろいろな種類が並んでいました。日曜の午後に行ったときは、駐車場が少し混んでいました。」
足された6か所を削り、駐車場の話は訪問した日のこととして書き直しました。
3. 言い方の候補を並べてもらう
「香ばしさがあり、甘さは強すぎません」の部分だけ、
言い方を3つ出してください。
・どれも内容は同じにしてください
・大げさな言葉は使わないでください
・私が選べるように、調子を変えてください
出力例
- そのまま伝える: 香ばしくて、甘さは強すぎませんでした。
- 順番を変える: 甘さは控えめで、そのぶんごまの香ばしさがよく分かりました。
- 自分を主語にする: わたしには、香ばしさが強く、甘さはちょうどよく感じました。
3は「わたしには」が付くことで、個人の感想だとはっきりします。断定を避けたいときに使いやすい形です。
4. 削りすぎたときに戻す
直してもらった文章が、少しそっけなくなりました。
事実だけが並んでいて、行ったときの雰囲気が伝わりません。
私のメモの範囲で、雰囲気が伝わる書き方に直してください。
新しい情報は足さないでください。
足りない部分があれば、私に質問してください。
出力例
「雰囲気を出すには、あと1つか2つ情報がほしいところです。次のどれか答えていただけますか。
- ソフトはどこで食べましたか(店の前、車の中、ベンチなど)
- そのとき、天気はどうでしたか
- 野菜売り場では、何が目に入りましたか
今のメモだけで書き直すと、次のようになります。
『日曜の午後、道の駅に立ち寄りました。黒ごまソフトは香ばしく、甘さは強すぎません。広い野菜売り場を見て回り、駐車場は少し混んでいました。』
雰囲気を足すなら、上の質問のどれかに答えていただくのが確実です。」
5. 修正依頼の型として残す
今日やったやりとりを、次から使える修正依頼の型にしてください。
条件:
・私が毎回書き換えるのは、指摘の中身だけにする
・3点に分ける形を残す
・そのままコピーして貼れる形にする
出力例
先ほどの文章を、次の3点を直して書き直してください。
1. 足された表現を削る
(私が見ていない、書いていない表現を書く)
2. 広げられた表現を、その日の話に戻す
(いつも・必ず・人気などに広げられた箇所を書く)
3. 言い方を落ち着かせる
(自分が使わない言葉を書く)
私が渡した情報だけで書いてください。
足りない部分があれば、書き足さずに質問してください。
最後の「書き足さずに質問してください」があると、削った分を勝手に埋め直されるのを防げます。
出力をレビューする
- 削ったはずの表現が、別の言葉で戻っていないか
- その日の話が、いつもの話に戻っていないか
- 自分が口に出さない言葉が残っていないか
- 削った結果、伝えたいことまで消えていないか
- 声に出して読んで、違和感がないか
返事が使いにくかったときの直し方
「ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。『日曜の午後に訪れた道の駅。素朴な味わいの黒ごまソフトは、ほどよい甘さで大人にも好まれそうな一品。地元の恵みが並ぶ売り場も見応えがありました。』」
削ったはずの表現が、別の言葉で戻っています。「素朴な味わい」「大人にも好まれそう」「地元の恵み」「見応え」は、どれもミカさんのメモにありません。言葉を変えただけで、足す癖はそのままです。
削ったはずの表現が、別の言葉で戻っています。
・「素朴な味わい」「大人にも好まれそう」「地元の恵み」「見応え」は、
どれも私のメモにありません
・言葉を言い換えるのではなく、削ってください
・私のメモの5項目より情報を増やさないでください
メモにある言葉だけを使って、もう一度書いてください。
「日曜の午後、道の駅で黒ごまソフトを食べました。香ばしくて、甘さは強すぎません。野菜売り場は広く、駐車場は少し混んでいました。」
「削ってください」だけだと、言い換えて残されることがあります。「情報を増やさないでください」「メモにある言葉だけを使って」まで足すと止まります。
小さな練習
AIに何か文章を作ってもらってください。まだなければ、今日あったことを3行メモにして「これを短い文章にして」と頼みます。
返ってきた文章を読んで、引っかかる箇所に印を付けてください。1か所でかまいません。その1か所を「足された」「広げられた」「言い方」のどれかに分けて、依頼文2の形で頼み直します。前より自分に近づいたら、この回は完了です。
次へ進む目安
「なんとなく違う」を1つでも言葉にできたら十分です。ここで作った修正依頼の型は、この講座のすべての回で使います。第19回では、これをさらに自分の文体に合わせて育てます。
次は「会話を分けて後で探せるようにする」へ進みます。やりとりが増えてきたので、あとから見つけられるようにします。