誰に向けて書くかが曖昧だと、文章もぼやけます。この回では、ナオさんが読者像を決めて、その人の疑問を書き出します。
この回で作るもの
読者メモ(1人分と、その人の疑問3つ)
読みそうな人を3タイプ挙げ、その中から1人に決めます。決めた人が知りたいことと不安に思うことを3つずつ書き出し、記事を書く前の指針にします。
今回の例
ナオさんの記事が、誰にも向いていない
ナオさんは「直売所の比較」を書き始めました。ところが書き進めるうちに、説明が長くなっていきます。移住を考えている人向けなのか、地元の人向けなのか、観光客向けなのか。全部に向けて書こうとして、どれにも届かない文章になりました。
- 書きかけの記事
- 直売所2か所の比較。行き方、品ぞろえ、立ち寄れる施設を書いた
- 書きながら迷ったこと
- 駅からの行き方を説明すべきか(地元の人には不要) / 移住相談の窓口に触れるべきか(観光客には不要) / 野菜の値段を書くべきか
- 止まっている理由
- 誰に向けて書くかを決めていないので、何を書いて何を省くかが決まらない
読者を決めると、省けるものが決まる
読者像を決める目的は、書くことを増やすためではありません。書かないことを決めるためです。
移住検討中の人に向けると決めれば、駅からの行き方は必要になり、地元の人向けの細かい情報は省けます。観光客向けなら逆です。1人に決めると、迷いが減ります。
- 全員に向けて書くと、誰にも届かない
- 読者を決めないと、何を省いてよいか判断できない
- 細かく設定しすぎると、かえって使えない
- 自分と同じ立場の人だけを想定すると、前提の説明が抜ける
読者像は、年齢や職業を細かく決める必要はありません。この回で決めるのは「その人が何を知りたいか」「何が不安か」だけです。それ以上細かくしても、記事を書くときには使いません。
AIに任せる部分と自分で見る部分
AIに頼みやすい
- 読みそうな人のタイプを挙げる
- それぞれの知りたいことを出す
- 不安に思うことを出す
- 読者を変えたときに省ける内容を示す
自分で見る
- 誰に届けたいかの決定
- その人が実際にいるかどうかの実感
- 省く内容の最終判断
- 自分が書ける範囲かどうか
進め方
- 記事のテーマを渡して、読みそうな人を3タイプ出してもらう
- 1人に決める
- その人が知りたいこと、不安に思うことを3つずつ出してもらう
- 省ける内容を確かめる
- 読者メモとして保存する
そのまま使える依頼文
1. 読みそうな人を3タイプ挙げる
「地域の直売所2か所を比べた記事」を書きます。
この記事を読みそうな人を3タイプ挙げてください。
・年齢や職業を細かく決めなくて構いません
・どんな状況でこの記事にたどり着くかを書いてください
・それぞれ、何を知りたくて読むかも一行で
出力例
- 移住を検討している人
その地域の暮らしを調べる中でたどり着きます。買い物の便がどれくらいかを知りたくて読みます - 近隣に住んでいて、まだ行ったことがない人
「どちらに行こうか」と検索して読みます。品ぞろえと行きやすさの違いを知りたいです - 旅行や帰省でその地域を訪れる人
立ち寄り先を探して読みます。お土産になるものがあるかを知りたいです
3タイプとも知りたいことが違います。1は生活の便、2は使い分け、3はお土産です。
2. 決めた人の疑問と不安を出す
1番目の「移住を検討している人」に向けて書きます。
この人が知りたいことを3つ、不安に思うことを3つ挙げてください。
記事を読む前に頭にあることを想像して書いてください。
一般論ではなく、直売所に関して具体的にお願いします。
出力例
知りたいこと
- 車がなくても日常の買い物ができるか
- 野菜は毎日買えるのか、それとも決まった曜日だけか
- スーパーと比べて、何がどれくらい違うのか
不安に思うこと
- 直売所しかなくて、欲しいものが手に入らないのではないか
- 地元の人の場所に、よそから来た自分が入りにくいのではないか
- 冬に営業しているのか。雪の時期はどうなるのか
不安の2番目は、記事では触れにくい内容ですが、書き方の調子には影響します。よそ者を歓迎しない場所だと感じさせない書き方が必要です。
3. 省ける内容を確かめる
読者を「移住を検討している人」に決めました。
書きかけの記事に入れている内容のうち、省けるものを教えてください。
入れている内容:
・駅からの行き方
・品ぞろえの違い
・支払い方法
・移住相談の窓口が同じ建物にあること
・野菜の値段の例
・建物の外観の説明
・駐車場の広さ
省ける理由も一行ずつ書いてください。
出力例
残す
- 駅からの行き方 — この読者はその地域に住んでいません。位置関係が分からないため必要です
- 品ぞろえの違い — 「日常の買い物ができるか」に直接答えます
- 移住相談の窓口 — この読者にとって、他では得にくい情報です
- 野菜の値段の例 — 「スーパーと比べてどうか」の判断材料になります
省ける
- 建物の外観の説明 — 写真があれば足ります。文章で説明する必要は小さいです
- 駐車場の広さ — 車を持たない読者には関係が薄い情報です。ただし、車での移住を考える人もいるため、一言だけ残す選択もあります
判断が分かれる
- 支払い方法 — 日常的に通うなら関係します。一言添える程度でよいと思われます
4. 前提の説明が抜けていないか見る
私はその地域に何度も行っているので、
読者には当たり前でないことを、当たり前として書いてしまうかもしれません。
「移住を検討している人」がこの記事を読んだとき、
説明がないと分からない言葉や前提があれば挙げてください。
記事の一部:
朝いちばんに行くと、地物の野菜が並んでいます。
奥の売り場には加工品もあります。
支払いのときに、袋は自分で用意する必要があります。
出力例
- 「朝いちばん」 — 何時頃を指すのかが分かりません。開店時刻を添えると具体的になります
- 「地物」 — 地元産という意味ですが、地域によって使わない言葉です。初出で言い換えを添えると親切です
- 「加工品」 — 何を指すか分かりにくい言葉です。漬物、味噌、ジャムなど、例を1つ挙げると伝わります
- 「袋は自分で用意する」 — 直売所では一般的ですが、初めて行く人には知らない前提です。ここは書いてあるので問題ありません
最初の3つは、その地域に慣れた人には自然でも、外から読む人には引っかかります。
5. 読者メモにまとめる
ここまでの内容を、1枚の読者メモにまとめてください。
・記事を書く前に読み返す用です
・10行以内にしてください
・「知りたいこと」「不安」「書かないこと」の3つを入れてください
・次の記事でも使い回せる形にしてください
出力例
■ 読者メモ:移住を検討している人
【状況】
その地域の暮らしを調べている。まだ住んでいない。土地勘がない。
【知りたいこと】
・車がなくても日常の買い物ができるか
・毎日買えるのか、決まった曜日だけか
・スーパーと比べてどう違うか
【不安】
・欲しいものが手に入らないのではないか
・よそから来た自分が入りにくいのではないか
・冬はどうなるのか
【書かないこと】
・建物の外観の細かい説明(写真に任せる)
・地元の人だけが分かる言葉(地物、朝いちばん など)
この10行を記事を書く前に読むと、書くことと省くことが決まります。
出力をレビューする
- 読者が1人に決まっているか
- 知りたいことが、記事のテーマに関して具体的か
- 省く内容が決まっているか
- 自分に当たり前の言葉が、説明なしで残っていないか
- 実際にそういう人がいると思えるか
返事が使いにくかったときの直し方
「ペルソナ設定:田中さん(38歳・男性・IT企業勤務・妻と子ども2人・世帯年収650万円・趣味はキャンプ・情報収集はInstagram中心・意思決定は妻と相談して行う・将来的にはFIREを目指している)」
細かく設定されていますが、記事を書くときに使う情報がありません。年収も趣味もFIREも、直売所の記事とは関係がありません。知りたいことも不安も書かれていないので、何を書いて何を省くかが決まりません。
細かい設定は、記事を書くときに使いません。
・年齢、性別、年収、趣味、家族構成は不要です
・カタカナの用語(ペルソナ、FIRE)を使わないでください
・その人が「何を知りたいか」「何が不安か」だけ書いてください
・直売所の記事に関係することに絞ってください
3つずつでお願いします。
「知りたいこと: 1. 車がなくても日常の買い物ができるか 2. 毎日買えるのか、決まった曜日だけか 3. スーパーと比べてどう違うか。不安: 1. 欲しいものが手に入らないのではないか 2. よそから来た自分が入りにくいのではないか 3. 冬はどうなるのか。」
読者像を頼むと、細かい人物設定が返ってくることがあります。「知りたいこと」と「不安」だけに絞ると、記事を書くときに使える形になります。
小さな練習
これから書く記事、または書きかけの記事のテーマを1つ決めてください。
依頼文1を送って、読みそうな人を3タイプ出してもらいます。1人に決めたら、依頼文2でその人の知りたいことと不安を出してもらってください。1つでも「これは書こう」と決まれば、この回は完了です。
次へ進む目安
記事を書く前に「誰に向けて書くか」を1人に決められたら十分です。ここで作った読者メモは、第28回で読者の疑問リストを作るとき、第35回でタイトルを考えるときに使います。
次は「同じテーマの切り口を変える」へ進みます。似た記事にならないための工夫です。