具体的に相談したいのに、そのまま書くと個人の情報が入ってしまう。この回では、ミカさんが伏せる部分と残す部分を分けて、安心して相談できる文を作ります。
この回で作るもの
そのまま送れる、安全な相談文
個人や店が特定される部分を伏せたうえで、相談に必要な情報は残した文を作ります。あわせて「入れない情報」の自分用リストも残します。
今回の例
ミカさんが、相談文を書きかけて手を止めている
ミカさんは、道の駅の売店の方とやりとりした内容を相談したくなりました。商品名を教えてもらったお礼と、記事に載せてよいかの確認をまとめて送りたいのです。ところが、書きかけた相談文を読み返して不安になりました。
- 書きかけた相談文
- 「道の駅みどり川の売店で、担当の方に商品名を教えてもらいました。売店の直通電話番号も聞いています。お礼と、記事掲載の確認をまとめたメールを作ってください。」
- 不安に思ったこと
- 店の名前、相手の名字、電話番号。これを入力していいのか分からない
- でも困ること
- 全部消すと、何の相談か伝わらなくなりそう
全部消す必要はありません
相談の中身は「お礼と掲載確認をまとめたメールを作りたい」ことです。この目的を伝えるのに、相手の名字も電話番号も要りません。一方で「売店の方に商品名を教えてもらった」という関係は必要です。
分ける基準は単純です。その情報がなくても相談が成り立つなら、入れない。これだけです。
- 入れない — 他人の名前、電話番号、住所、メールアドレス、勤務先
- 入れない — 自分以外の人から聞いた、まだ公になっていない話
- 入れない — 仕事で知った、外に出していない情報
- 入れてよい — 自分の体験、自分が公開するつもりの内容、関係性(売店の方、親戚など)
- 迷ったら — 伏せ字にして送り、必要になったら聞かれてから考える
線を決めておくと、かえって具体的に相談できるようになります。何を入れないかがはっきりしていれば、それ以外は安心して書けるからです。
AIに任せる部分と自分で見る部分
AIに頼みやすい
- 相談文から特定できる情報を見つける
- 伏せ字や言い換えの案を出す
- 相談に必要な情報を残す
- 自分用のリストを作る
自分で見る
- 何を伏せるかの最終判断
- 他人から聞いた話かどうかの記憶
- 公開してよい内容かどうか
- 実際に送信する
進め方
- 相談したいことを、まず自分の手元に普通に書く
- その中から、特定できる情報を見つけてもらう
- 伏せ字にしたうえで、相談が成り立つか確かめる
- 伏せた文を送る
- 今回入れなかった情報を、自分用のリストに残す
そのまま使える依頼文
1. 伏せる部分を見つけてもらう
これから相談したい内容があります。
送る前に、個人や店が特定される部分を確認したいです。
次の文の中で、伏せたほうがよい箇所を挙げてください。
それぞれ、なぜ伏せたほうがよいかも書いてください。
文:
道の駅の売店で、店員の方に商品名を教えてもらいました。
お礼と、記事に載せてよいかの確認をまとめたメールを作りたいです。
相手の名字と電話番号も控えてあります。
出力例
- 相手の名字 — 他の方の情報です。メールを作るのに名前は不要で、宛名はあとからご自身で入れられます
- 電話番号 — 個人または店の連絡先です。この相談の目的(メールの文面づくり)に使いません
- 店名や地名 — 今回の文には出ていませんが、入れると場所が特定されます。記事で公開する予定なら差し支えありませんが、メールの文面を作るだけなら不要です
一方、「売店の方に商品名を教えてもらった」という関係は残してください。お礼の文面を作るのに必要な情報です。
2. 伏せた形で相談する
道の駅の売店の方に、商品名を教えていただきました。
そのお礼と、ブログ記事に商品名と写真を載せてよいかの確認を、
1通のメールにまとめたいです。
宛名と店名は、あとで自分で入れるので空欄にしてください。
相手の負担にならない長さにしてください。
出力例
件名: 先日のお礼と、掲載についてのお願い
売店ご担当者様
先日、売店で商品名を教えていただきありがとうございました。
おかげで、正確な名前で記録することができました。
個人で運営しているブログで、その日の様子を紹介したいと考えております。
つきましては、商品名と、店頭で撮影した写真を掲載してもよろしいでしょうか。
ご都合の悪い点がありましたら、その旨お知らせいただければ掲載は控えます。
お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認いただけますと幸いです。
(署名)
宛名と店名は空欄にしています。送る前に、ご自身で入れてください。
3. 他人から聞いた話を扱う
売店の方から、まだ公表していない新商品の話を聞きました。
記事には書かないつもりですが、扱い方を確認したいです。
このような、相手から聞いたけれど公になっていない話について、
私が守ったほうがよいことを3つ教えてください。
新商品の具体的な内容は、この依頼文には書きません。
出力例
- 内容をAIに入力しない — 相手の情報であり、あなたの判断で外に出せるものではありません。今回のように、内容を書かずに扱い方だけ相談するのが安全です
- 書いてよいか、聞いた相手に確認する — 公表の時期が決まっていることもあります。書きたい場合は、いつから書いてよいかを尋ねてください
- ぼかして書くのも避ける — 「近々新しいものが出るそうです」も、相手の予定を漏らすことになります。書かない判断が確実です
4. うっかり入力してしまったときの対応
相談のときに、相手の電話番号をそのまま入力してしまいました。
気づいたのは送ったあとです。
この場合、私が今からできることを教えてください。
不安をあおる説明は不要です。実際にできる動作だけ書いてください。
出力例
- その会話を削除する。会話ごと消せば、画面上には残りません
- 使っているサービスの設定で、会話の保存や学習に関する項目を確認する。名称や場所は変わることがあるため、公式のヘルプを見てください
- 同じ内容を別の会話に貼り直さない。続きをやる場合は、伏せ字にしたうえで新しい会話を作る
今後については、送信ボタンの前に一度、他人の名前と数字が入っていないか目で追う習慣が有効です。
5. 自分用の「入れない情報」リストを作る
私がAIに相談するのは、ブログ記事、店や施設への連絡、
親戚や友人へのメッセージ、調べものです。
この範囲で、入力しないと決めておくべき情報をリストにしてください。
5項目以内にしてください。
判断に迷ったときの目安も1行足してください。
出力例
入力しない情報
- 他人の名前、電話番号、住所、メールアドレス
- 相手から聞いた、まだ公になっていない話
- 自分の住所、勤務先、口座やカードの番号
- 写真に写った他人の顔(画像を渡す場合)
- 仕事で知り得た、外に出していない情報
迷ったときの目安: その情報を消しても相談が成り立つなら、入れない。
出力をレビューする
- 伏せた結果、相談の目的が伝わらなくなっていないか
- 他人の情報が、言い換えられた形で残っていないか
- 宛名や固有名詞が、空欄のままになっているか
- 自分が公開するつもりのない話が入っていないか
返事が使いにくかったときの直し方
「個人情報の取り扱いには十分ご注意ください。一般的に、氏名・住所・電話番号・メールアドレス・生年月日などは個人情報に該当します。これらの取り扱いについては、関連法令およびサービスの利用規約をご確認のうえ、慎重にご判断ください。」
間違ってはいませんが、ミカさんの相談には答えていません。知りたいのは「この文のどこを伏せればいいか」です。一般論と注意喚起が返ってきただけで、書きかけの文は1文字も進んでいません。
一般的な説明ではなく、私が貼った文について答えてください。
・法令や規約の話は不要です
・「慎重に判断」ではなく、どこを伏せるかを具体的に指してください
・伏せたあとの文も出してください
私が知りたいのは、この文をどう直せば送れるかです。
「伏せる箇所は2つです。名字と電話番号を削ってください。残すのは『売店の方に商品名を教えてもらった』という関係だけで、相談は成り立ちます。伏せたあとの文はこちらです。『道の駅の売店の方に商品名を教えていただきました。そのお礼と、記事に載せてよいかの確認を1通のメールにまとめたいです。』」
注意喚起で終わる返事が来たら、「一般論は不要」「どこを直すか具体的に」と伝えます。判断を自分に丸投げされずに済みます。
小さな練習
誰かとのやりとりについて、AIに相談したいことを1つ思い浮かべてください。メールの返信でも、お礼でも、断り方でもかまいません。
まず、伏せずに自分のメモアプリに書いてみます。次に依頼文1を使って、伏せる箇所を見つけてもらいます。伏せた形で送って、返事が使えるものになっていれば、この回は完了です。
次へ進む目安
相談文を送る前に、他人の名前と数字を一度目で追えるようになったら十分です。ここで作った「入れない情報」のリストは、第39回で自分のAI利用ルールを作るときの材料になります。
次は「AIの答えをそのまま信じない」へ進みます。今度は、送った先から返ってくる情報の扱い方です。