迷うと「どうしたらいい?」と聞きたくなります。この回では、ナオさんがAIに判断材料だけを出させて、決めるのは自分でやります。
この回で作るもの
選択肢ごとの判断メモと、自分が決めた結論
それぞれの選択肢について、根拠と懸念を3つずつ整理します。最後に自分で決めて、決めた理由を1行で書きます。この1行が今日の成果物です。
今回の例
ナオさんが、公開するかどうかで止まっている
ナオさんは直売所の記事を書き終えました。点検も通しました。それでも公開ボタンを押せません。今日出すか、もう少し寝かせるか、決められないままです。
- 記事の状態
- 本文は完成。確認できなかった情報は削除済み。5観点の点検で「該当なし」
- 気になっていること
- 冬期の営業日をまだ電話で確認していない / 写真がもう1枚あるとよさそう / 書いてから1週間たっている
- やりそうになったこと
- AIに「今日公開すべきですか?」と聞くこと
- 止まっている理由
- 決め手がない。誰かに決めてほしい
AIに決めさせると、決めた理由が残りません
「公開すべきですか」と聞けば、AIは答えます。「公開をおすすめします」でも「もう少し確認してからのほうが安心です」でも、それらしい理由が付いてきます。
問題は、その判断がナオさんの事情を知らないまま出されることです。締め切りがあるのか、次の記事の予定はどうか、確認の電話をかけられる時間があるのか。AIは知りません。そして、AIの答えに従って公開したあと、なぜそう決めたのかがナオさんの中に残りません。
- AIの結論は、自分の事情を含んでいない
- 決めた理由が残らないと、次に同じ場面でまた迷う
- 「どちらでもよい」と言われると、余計に決まらない
- 迷いを消そうとすると、いつまでも決まらない
第21回から第30回で、問いを立て、確かめ、比べ、絞り、決めるまでを扱いました。この回で作る判断メモは、第40回で30日を振り返るときにも同じ形で使えます。
AIに任せる部分と自分で見る部分
AIに頼みやすい
- 選択肢を並べる
- それぞれの根拠と懸念を出す
- 自分が見落としている点を足す
- 決めるために必要な情報を挙げる
自分で見る
- 決定そのもの
- 決めた理由を言葉にすること
- 自分の事情(時間、予定、気持ち)
- 決めたあとに実行すること
進め方
- 選択肢を自分で書き出す
- それぞれの根拠と懸念を出してもらう
- 決めるために足りない情報を確かめる
- 自分で決める
- 決めた理由を1行で書く
そのまま使える依頼文
1. 選択肢ごとの根拠と懸念を出す
記事を公開するかどうか迷っています。
決めないでください。判断材料だけ出してください。
【選択肢】
A 今日公開する
B 冬期の営業日を電話で確認してから公開する
C 写真を撮り直してから公開する
【状況】
本文は完成。確認できなかった情報は削除済み
5観点の点検は「該当なし」
書いてから1週間たっている
A、B、Cそれぞれについて、選んだ場合の根拠と懸念を3つずつ書いてください。
おすすめは書かないでください。
出力例
A 今日公開する
- 根拠: 本文は完成し、点検も通っています / 確認できない情報はすでに削除済みです / 1週間たっており、内容の鮮度が落ちていきます
- 懸念: 冬期の営業日が書かれていないため、その時期に読む人には情報が足りません / 写真が1枚少ない状態です / 公開後に直す手間が発生する可能性があります
B 電話確認してから公開する
- 根拠: 冬期の情報が加わると、読者の疑問に1つ多く答えられます / 電話は1回で済みます / 掲載の了承も同時に取れます
- 懸念: 相手の営業時間に合わせる必要があります / 電話がつながらない日が続くと、さらに遅れます / その間、記事は誰にも読まれません
C 写真を撮り直してから公開する
- 根拠: 見た目が整います / 撮り直しは自分の都合だけで進められます
- 懸念: 次に現地へ行く予定が必要です / 記事の内容は写真を足しても変わりません / 撮り直しは、公開後でも差し替えられます
2. 見落としている選択肢を出してもらう
A、B、C以外の選択肢があれば挙げてください。
・私が思いついていない進め方を探してください
・2つまででお願いします
・それぞれ、根拠と懸念も1つずつ書いてください
・どれがよいかは書かないでください
出力例
D 今日公開し、確認後に追記する
- 根拠: 記事は読まれ始め、確認できた情報はあとから足せます
- 懸念: 追記を忘れる可能性があります。更新日を記事に残す運用が必要です
E 冬期の情報に触れずに公開し、冬に別記事を書く
- 根拠: 今の記事は「訪問日の記録」として完結します。冬の話は別の切り口になります
- 懸念: 冬に実際に行けるかどうかが未定です
3. 決めるために足りない情報を挙げる
まだ決められません。
決めるために、私が確かめておくべきことがあれば挙げてください。
・3つまででお願いします
・私が今日中に確かめられることに限ってください
・確かめたあと、どう判断が変わるかも書いてください
出力例
- 直売所の電話受付時間 — 今日中にかけられるなら、Bの懸念はほぼ消えます。かけられないなら、Bは数日先に延びます
- 次に現地へ行く予定があるか — 予定があるなら、Cは「そのときでよい」となり、選択肢から外れます
- 記事の更新日を表示する設定になっているか — 表示されるなら、Dの懸念(追記を忘れる)が読者に伝わる形になり、選びやすくなります
3つとも、数分で確かめられます。確かめたあとで、もう一度選択肢を見てください。
4. 判断メモにまとめる
ここまでの内容を、1枚の判断メモにまとめてください。
・選択肢、根拠、懸念の3つを入れてください
・結論の欄は空けておいてください。私が書きます
・「決めた理由」の欄も空けておいてください
・A4の紙1枚に収まる分量にしてください
出力例
■ 判断メモ:直売所の記事を公開するか
A 今日公開する
根拠: 本文完成 / 点検済み / 1週間経過
懸念: 冬期情報なし / 写真1枚不足
B 電話確認してから公開
根拠: 疑問に1つ多く答えられる / 掲載了承も同時に取れる
懸念: 相手の時間に合わせる / つながらないと遅れる
C 写真を撮り直してから公開
根拠: 見た目が整う
懸念: 現地へ行く予定が必要 / 公開後でも差し替え可
D 今日公開し、確認後に追記
根拠: 読まれ始める / あとから足せる
懸念: 追記を忘れる可能性
【結論】
【決めた理由】
下2つの欄は、あなたが埋めてください。
5. 決めたあとに、決め方を振り返る
Dに決めました。今日公開して、電話確認ができたら追記します。
決めた理由は「1週間止まっていたので、まず読まれる状態にしたかった」です。
この決め方を、次から使える形にしてください。
・私が迷ったときに見る手順として書いてください
・5ステップ以内にしてください
・AIに結論を聞かない形にしてください
出力例
- 選択肢を自分で3つ書き出す — AIに選択肢を作らせず、まず自分の頭にあるものを出します
- 根拠と懸念を3つずつ出してもらう — 「決めないでください」と最初に書きます
- 見落としている選択肢を2つまで足してもらう — 自分では思いつかない進め方が出ることがあります
- 今日中に確かめられることを3つまで挙げてもらう — 確かめると、選択肢が減ることがあります
- 自分で決めて、理由を1行書く — 理由を書くと、次に同じ場面で迷ったとき参照できます
5の1行を残すことが、この手順の要点です。結論だけ残しても、次の判断には使えません。
出力をレビューする
- おすすめや結論が入っていないか
- 根拠と懸念が、同じ数ずつ出ているか
- 自分の事情(時間、予定)が反映されているか
- 結論の欄が空いているか
- 決めた理由を、自分の言葉で1行書いたか
返事が使いにくかったときの直し方
「結論から申し上げると、Bの『電話確認してから公開』をおすすめします。情報の正確性は読者の信頼に直結するため、多少の遅れよりも確実性を優先すべきです。1週間の遅れは大きな問題になりません。ぜひ確認を取ってから公開してください。」
決めないでほしいと伝えたのに、結論が返ってきました。しかも「1週間の遅れは大きな問題ではない」という判断は、ナオさんの事情を知らずに出されています。次の記事の予定も、電話をかけられる時間も、AIは知りません。この答えに従うと、決めた理由がナオさんの中に残りません。
決めるのは私です。結論を書かないでください。
・「おすすめします」「〜すべきです」を使わないでください
・どれかを優先する理由を書かないでください
・A、B、Cそれぞれについて、根拠と懸念を3つずつ並べてください
・私の事情(使える時間、次の予定)は、あなたには分かりません
判断材料だけ出してください。
「A 今日公開する。根拠: 本文完成 / 点検済み / 1週間経過。懸念: 冬期情報なし / 写真1枚不足 / 公開後の修正が発生しうる。B 電話確認してから。根拠: 疑問に1つ多く答えられる / 電話は1回で済む / 掲載了承も取れる。懸念: 相手の時間に合わせる / つながらない可能性 / その間読まれない。(C以下略)」
判断を頼むと、ほぼ必ず結論が付いてきます。「決めるのは私です」「結論を書かないで」と最初に書くこと、そして返ってきたら押し返すこと。この2つで、材料だけが手に入ります。
小さな練習
今、決めかねていることを1つ選んでください。仕事でも、買い物でも、記事のことでもかまいません。
選択肢を自分で3つ書き出して、依頼文1を送ります。根拠と懸念が出てきたら、それを見て自分で1つ決めてください。最後に、決めた理由を1行書きます。その1行が今日の成果物です。
次へ進む目安
迷ったときに「どうしたらいい?」ではなく「判断材料を出して」と聞けたら十分です。ここで作った手順は、第39回で自分のAI利用ルールを作るとき、第40回で振り返るときにも使います。
ここまでで4章は終わりです。次の第31回からは、ユイさんが登場します。ここからは、1本の記事を実際に公開まで運びます。