本文は書けそうなのに、最初の一文で止まる。この回では、ハルさんが型の違う導入文を3つ作り、書き継げるものを選びます。
この回で作るもの
型の違う導入文3案と、選んだ1案
場面から入る、疑問から入る、結論から入るの3型で導入文を作ります。選ぶ基準は「続きを自分が書けるか」です。
今回の例
ハルさんが、導入だけで30分使っている
ハルさんは、和菓子店の記事を書こうとしています。中身は決まっています。ところが、最初の一文を書いては消し、書いては消して30分がたちました。本文にたどり着けません。
- 記事に書くこと
- 栗どら焼き260円 / 皮がふんわり、あんは甘さ控えめ / 平日午後は空いていた / 窓際から通りが見えた / 包み方を丁寧に教えてもらった
- 書いては消した導入
- 「今回は和菓子店をご紹介します」「秋になると食べたくなるものがあります」「先日、素敵なお店を見つけました」
- 止まっている理由
- どれも書けるが、そのあと何を書けばいいのか続かない
導入が決まらないのは、続きが決まっていないから
ハルさんが書いた3つの導入は、どれも間違いではありません。ただ、書いたあとに続けにくい形です。「今回はご紹介します」のあとには何でも書けてしまうので、逆に次の一文が決まりません。
導入は、続きの方向を決める役目を持っています。「バスを乗り過ごした」から始めれば、次は到着の話になります。「モーニングは何時までか知っていますか」から始めれば、次は答えになります。導入で方向が決まれば、本文は自然に進みます。
- どんな記事にも使える導入は、続きが決まらない
- きれいに書こうとすると、中身のない一文になる
- 1案しか作らないと、それが良いか判断できない
- 導入で全部説明しようとすると、本文がなくなる
第11回で作った120字の紹介文は、記事の外に置くまとめでした。導入文は記事の中の入り口で、続きがあることが前提です。まとめと入り口では、役目が逆になります。
AIに任せる部分と自分で見る部分
AIに頼みやすい
- 型を変えた導入案を出す
- それぞれの続きの方向を示す
- 長さを調整する
- 説明しすぎた箇所を削る
自分で見る
- その続きを自分が書けるか
- 実際の出来事と合っているか
- 記事の中心と入り口が一致しているか
- どれを採用するか
進め方
- 記事に書くことを箇条書きで渡す
- 3つの型で導入案を出してもらう
- それぞれの続きの方向を書いてもらう
- 自分が書けそうな1案を選ぶ
- 選んだ案の次の一文まで書いてみる
そのまま使える依頼文
1. 3つの型で導入案を作る
ブログ記事の導入文を3案作ってください。
それぞれ、次の型で書いてください。
・場面から入る(その日の様子から始める)
・疑問から入る(読む人が知らないことを問いにする)
・結論から入る(一番伝えたいことを最初に置く)
記事に書くこと:
栗どら焼き260円
皮がふんわり、あんは甘さ控えめ
平日午後は空いていた
窓際から通りが見えた
包み方を丁寧に教えてもらった
条件: 2文以内。私が書いていないことは足さない。
出力例
場面から
「平日の午後、和菓子店の窓際の席に座りました。通りを眺めながら、栗どら焼きが包まれるのを待っていました。」
疑問から
「どら焼きの包み方に、決まった手順があるのをご存じでしょうか。先日、店の方に教えていただきました。」
結論から
「栗どら焼きは1個260円でした。皮はふんわり、あんは甘さ控えめで、栗の味が前に出る組み合わせです。」
2. 続きの方向を書いてもらう
3案それぞれについて、次に書くことになる内容を教えてください。
・この導入のあと、読む人は何を期待するか
・その期待に応えるために、何を書く必要があるか
・私の手元の材料で、それが書けるか
書けない場合は、はっきり書けないと言ってください。
出力例
場面から
- 読む人の期待: 待っている間に何を見たか、その後どうなったか
- 必要な内容: 窓から見えた様子、包んでもらう場面、食べたときの話
- 書けるか: 書けます。窓際の様子と包み方の材料があります
疑問から
- 読む人の期待: 包み方の手順そのもの
- 必要な内容: 実際にどう包むのか、何のためにその手順なのか
- 書けるか: 書けません。「丁寧に教えてもらった」という材料はありますが、手順の中身がメモにありません。書くには、店で聞いた内容を思い出すか、もう一度確かめる必要があります
結論から
- 読む人の期待: なぜその味なのか、どこで買えるのか
- 必要な内容: 味の詳しい説明、店の情報
- 書けるか: 味は書けます。店の情報は、営業時間などを確認していれば書けます
3. 説明しすぎた導入を削る
次の導入は、内容を説明しすぎている気がします。
本文で書くことまで入っていないか見てください。
導入:
平日の午後、和菓子店に行きました。
栗どら焼きは1個260円で、皮はふんわりして、あんは甘さ控えめです。
店内は空いていて、窓際の席から通りが見えました。
店の方に包み方も教えていただきました。
入っていれば、削った案を出してください。
出力例
この導入には、記事の内容がほぼ全部入っています。読む人は、これを読んだ時点で内容を知ってしまうため、本文を読む理由がなくなります。
削った案
「平日の午後、和菓子店の窓際の席に座りました。通りを眺めながら、栗どら焼きが包まれるのを待っていました。」
本文に回した内容: 価格、味、店内の様子、包み方
導入に残したのは、場面だけです。何があったかは本文で書きます。
4. 次の一文まで書いてもらう
「場面から」の案を採用します。
この導入の次に来る一文を、3つ出してください。
それぞれ、記事がどの方向に進むかも書いてください。
導入:
平日の午後、和菓子店の窓際の席に座りました。
通りを眺めながら、栗どら焼きが包まれるのを待っていました。
出力例
- 「この日は平日だったからか、店内にはほかにお客さんがいませんでした。」
→ 店の様子の話に進みます - 「包み紙の折り方に、決まった順番があるようでした。」
→ 包み方の話に進みます(手順の材料が必要) - 「栗どら焼きは1個260円。冷めないうちに、家で食べようと決めていました。」
→ 商品と味の話に進みます
手元の材料が一番多いのは3の方向です。1も書けますが、材料が2項目なので短くなります。
5. 導入の型を残しておく
今日使った3つの型を、次から使える形にまとめてください。
・私のブログは、訪ねた店や場所のことを書くブログです
・それぞれ、どんなときに向くかを一行で
・その型を使うときの注意点も一行で
3つのまま、増やさないでください。
出力例
| 型 | 向いているとき | 注意点 |
|---|---|---|
| 場面から | その日の体験が記事の中心のとき | 場面だけにして、何があったかは本文に回す |
| 疑問から | 読む人が知らない情報を持っているとき | 答えを書ける材料が手元にあるか先に確かめる |
| 結論から | 1つの商品や結果に絞った記事のとき | 結論を書いたあと、理由を書ける分量があるか確かめる |
3つとも、選ぶ前に「続きを書けるか」を確かめる点が共通しています。
出力をレビューする
- その導入の続きを、自分が書けるか
- 記事の内容を説明しすぎていないか
- どんな記事にも使える一般的な文になっていないか
- 実際にあったことと合っているか
- 2文以内に収まっているか
返事が使いにくかったときの直し方
「秋の深まりとともに、無性に和菓子が恋しくなる季節がやってきました。皆さんは、お気に入りの和菓子店はありますか。今回は、私が最近訪れた素敵なお店をご紹介します。」
どんな記事にも使える導入です。この3文からは、次に何が来るのか決まりません。「和菓子が恋しくなる」も「素敵なお店」も、ハルさんが書いた材料にはありません。3文使って、内容が1つも入っていない状態です。
この導入は、どんな記事にも使える形になっています。
・季節の話から始めないでください
・「皆さんは〜ありますか」のような呼びかけを入れないでください
・「今回はご紹介します」で終わらせないでください
・私の材料(窓際の席、包み方、260円)のどれかを必ず使ってください
この記事にしか使えない導入にしてください。
「平日の午後、和菓子店の窓際の席に座りました。通りを眺めながら、栗どら焼きが包まれるのを待っていました。」
「この記事にしか使えない導入にしてください」が効く一言です。手元の材料を必ず使うよう指定すると、一般論から抜けます。
小さな練習
これから書く記事、または書きかけの記事の材料を、5行の箇条書きにしてください。
その5行で依頼文1を送り、3つの型で導入案を出してもらいます。次に依頼文2で、それぞれの続きが書けるか確かめてください。「これなら書ける」という案が1つ見つかれば、この回は完了です。
次へ進む目安
導入を選ぶときに「この続きを書けるか」で判断できたら十分です。ここで作った型の表は、第31回で記事の構成を作るときにも使います。
次は「見出しで読む流れを作る」へ進みます。導入のあとの、記事の骨組みです。