公開ボタンの前で、何が不安かも分からないまま止まる。この回では、ハルさんが自分の文章を3つの観点に分けて点検します。
この回で作るもの
3観点の公開前チェック結果
記事を「要確認の事実」「言いすぎ」「読みにくい箇所」の3つに分けて点検します。問題のない観点は「なし」と答えてもらい、直す場所だけを残します。
今回の例
ハルさんが、公開ボタンを押せずにいる
記事は書き上がりました。導入も見出しも整えました。それなのに、公開ボタンの前で手が止まります。何かが不安なのですが、その何かが分かりません。
- 記事の一部
- 「駅から歩いて7分ほどの和菓子店です。平日の午後は空いていて、ゆっくり選べます。栗どら焼きは1個260円。創業から続く人気商品だそうです。皮はふんわりして、あんは甘さ控えめでした。窓際の席から商店街の細い道が見えます。」
- 確かめたこと
- 価格260円(レシート) / 駅から7分(自分で歩いた) / 味(自分で食べた)
- 確かめていないこと
- 創業から続く商品かどうか / 平日がいつも空いているか
- 止まっている理由
- 不安の中身が分からないので、何を直せばいいのかも分からない
不安は、3つに分ければ小さくなる
「なんとなく不安」のままでは、どこを直せばいいのか決まりません。観点を分けると、不安が具体的な直し先に変わります。
- 要確認の事実 — 数字、名称、時間、由来など、確かめていないと書けないこと
- 言いすぎ — 一度の体験を、いつものことのように書いた箇所
- 読みにくい箇所 — 意味は正しいが、読む人が引っかかる場所
ハルさんの記事で言えば、「創業から続く人気商品だそうです」は1つ目、「平日の午後は空いていて」は2つ目に当たります。分けてしまえば、直し方も違うと分かります。
点検を頼むと、AIは何かしら指摘しようとします。「問題のない観点は、なしと書いてください」と先に伝えておくと、無理な指摘が減ります。直す必要のない場所まで直すと、記事が壊れます。
AIに任せる部分と自分で見る部分
AIに頼みやすい
- 観点ごとに該当箇所を挙げる
- なぜ問題になるかを説明する
- 直した書き方を提案する
- 問題のない観点を「なし」と答える
自分で見る
- 指摘が自分の記事に当てはまるか
- 実際に事実を確かめる
- 削るか、書き方を変えるかの選択
- 公開するかどうかの最終判断
進め方
- 記事の本文を用意する
- 3観点を指定して点検してもらう
- 要確認の事実は、実際に確かめる
- 言いすぎは、その日の話に戻す
- 読みにくい箇所は、直すかどうか自分で決める
そのまま使える依頼文
1. 3観点で点検する
公開前の記事を点検してください。
次の3つの観点に分けて答えてください。
1. 要確認の事実(確かめていないと書けないこと)
2. 言いすぎ(一度の体験を、いつものことのように書いた箇所)
3. 読みにくい箇所
問題がない観点は「なし」と書いてください。
無理に指摘を増やさないでください。
記事:
駅から歩いて7分ほどの和菓子店です。
平日の午後は空いていて、ゆっくり選べます。
栗どら焼きは1個260円。創業から続く人気商品だそうです。
皮はふんわりして、あんは甘さ控えめでした。
窓際の席から商店街の細い道が見えます。
出力例
1. 要確認の事実
- 「創業から続く」 — いつ創業か、その商品がいつからあるかを確かめないと書けません
- 「人気商品」 — 何をもって人気とするかの根拠が必要です
2. 言いすぎ
- 「平日の午後は空いていて、ゆっくり選べます」 — 訪れたのは1回です。「平日の午後は」と書くと、いつもそうだと読まれます
3. 読みにくい箇所
- なし。文の長さも並びも、読みにくいところはありません
指摘は2つの観点に3件です。3つ目の観点は問題ありませんでした。
2. 確認先を出してもらう
「創業から続く」「人気商品」について、
私が確認できる方法を教えてください。
私が使えるのは、店の公式サイト、店頭の掲示、店の方への質問です。
確認できなかった場合の書き方も、あわせて教えてください。
出力例
| 項目 | 確認方法 | 確認できなかったとき |
|---|---|---|
| 創業から続く商品か | 公式サイトの店舗紹介、店頭の掲示。なければ店の方に直接うかがう | この一文を削る。商品の由来には触れない |
| 人気商品か | 確認手段がありません。売上や順位は公開されていないことがほとんどです | 「わたしはこの組み合わせが好きです」と自分の感想にする |
「人気」は、店の方が「よく出ます」とおっしゃった場合でも、そのまま書くと断定になります。「店の方によると、よく出る商品とのことです」のように出どころを添える形が確実です。
3. 言いすぎをその日の話に戻す
「平日の午後は空いていて、ゆっくり選べます」を直したいです。
私が行ったのは1回だけです。
その日の話だと分かる書き方に直してください。
そっけなくならないよう、2案出してください。
出力例
- 「わたしが行った平日の午後は空いていて、ゆっくり選べました。」
主語を自分にして、過去形にしています - 「この日は平日の午後だったからか、店内は空いていました。おかげでゆっくり選べます。」
「この日は」で1回の訪問だと示し、理由は推測として置いています
1のほうが短く、2のほうが場面が伝わります。どちらも、いつもそうだとは書いていません。
4. 直したあとにもう一度点検する
指摘をふまえて直しました。
同じ3観点で、もう一度点検してください。
新しい問題が増えていないかも見てください。
問題がなければ「なし」と書いてください。
直した記事:
駅から歩いて7分ほどの和菓子店です。
わたしが行った平日の午後は空いていて、ゆっくり選べました。
栗どら焼きは1個260円でした。
皮はふんわりして、あんは甘さ控えめです。
窓際の席から商店街の細い道が見えます。
出力例
- 1. 要確認の事実 — なし。価格、距離、味は、いずれもご自身で確かめた内容です
- 2. 言いすぎ — なし。「わたしが行った」で1回の訪問だと分かります
- 3. 読みにくい箇所 — なし
新しく増えた問題もありません。「創業から続く人気商品」の一文を削ったことで、記事の情報量は減りましたが、確かめた内容だけになりました。
5. 自分用のチェックリストにする
今回の点検を、次から自分で使えるチェックリストにしてください。
・私のブログでは、訪ねた店や場所のことを書いています
・項目は6つ以内にしてください
・「気をつける」ではなく、確かめる動作で書いてください
・公開前に3分で通せる分量にしてください
出力例
公開前チェック(3分)
- 数字(価格、時間、距離)に、確かめた記録があるか
- 「いつも」「毎回」「必ず」と書いた箇所を探し、1回の体験でないか確かめる
- 「人気」「有名」「愛される」と書いた箇所を探し、出どころを言えるか確かめる
- 「〜だそうです」と書いた箇所を探し、誰から聞いたか言えるか確かめる
- 自分の感想と、事実が混ざっていないか読み返す
- 声に出して1回読む
1から4は探すだけなので、1項目30秒ほどです。6は記事の長さによりますが、短い記事なら1分で終わります。
出力をレビューする
- 3観点に分かれて答えているか
- 問題のない観点に「なし」と書かれているか
- 指摘が、記事の実際の箇所を指しているか
- 直した案が、確かめていない情報を足していないか
- 直したあとに、新しい問題が増えていないか
返事が使いにくかったときの直し方
「全体的によく書けています。より魅力的にするために、店内の雰囲気をもう少し詳しく描写してはいかがでしょうか。また、季節感を出す表現を加えると、読者の共感を得やすくなります。写真の説明文も追加を検討してみてください。」
点検を頼んだのに、改善提案が返ってきました。しかも「季節感を出す表現」は、ハルさんが確かめていない情報を足すことになります。公開前の確認をしたかったのに、書き足す作業が増えました。
改善の提案ではなく、点検をしてください。
・書き足す提案は不要です。今の記事のままで公開してよいかを見てください
・3つの観点(要確認の事実 / 言いすぎ / 読みにくい箇所)に分けてください
・どの一文のことを言っているのか、その文を書き写してください
・問題がない観点は「なし」と書いてください
「1. 要確認の事実:『創業から続く人気商品だそうです』 — 創業時期と、人気の根拠が確認できていません。2. 言いすぎ:『平日の午後は空いていて』 — 1回の訪問から、いつもの状態として書かれています。3. 読みにくい箇所: なし。」
点検と改善提案は別の作業です。「書き足す提案は不要」「今のままで公開してよいかを見て」と伝えると、点検だけが返ってきます。
小さな練習
いま手元にある記事を1本開いてください。書きかけでも、すでに公開したものでも大丈夫です。短いほうが試しやすいです。
依頼文1をコピーして、記事の部分を自分のものに入れ替えて送ります。3観点の結果を見て、1つでも直せたら、この回は完了です。「なし」が返ってきた観点があれば、そこは直さなくて大丈夫です。
次へ進む目安
公開前の不安を、3つのうちどれかに分けられたら十分です。ここで作ったチェックリストは、第29回で5観点に広げ、第36回の公開手順書に組み込みます。
ここまでで3章は終わりです。次の第21回からは、ナオさんという別の方が登場します。ここからは、調べることと決めることを扱います。