1文ずつは分かるのに、通して読むと分かりにくい。それは並び順の問題です。この回では、ハルさんが文の順番を組み直します。
この回で作るもの
並べ替えた説明文と、その順にした理由
ばらばらの文を、初めて読む人に伝わる順に並べ直します。並べ替えの理由も一緒に受け取り、次から自分で判断できるようにします。
今回の例
ハルさんの文章が、行ったり来たりしている
ハルさんは、和菓子店の紹介部分を書きました。1文ずつ読めば問題ありません。ところが通して読むと、話があちこちに飛んでいる感じがします。自分で読んでも、どこが悪いのか分かりません。
- 書いた5つの文
- 1. 栗どら焼きは1個260円です。
2. 駅から歩いて7分ほどのところにあります。
3. 皮はふんわりして、あんは甘さ控えめです。
4. 平日の午後は空いていて、ゆっくり選べました。
5. 店の前に小さな看板が出ています。 - 感じていること
- 読みにくいが、どの文が悪いのかは分からない。全部必要な情報に見える
- 止まっている理由
- 正しい順番があるのかどうかも分からない
順番の正解は1つではありません
並べ方に唯一の正解はありません。ただ、読む人の頭の動きに沿った順はあります。ハルさんの5文で言えば、こうです。
読む人は、まず「どこの店か」を知りたくなります(2、5)。次に「何があるか」(1)、そして「どうだったか」(3)。「そのときの様子」(4)は最後に置くと、読み終わったあとに場面が残ります。
今の並びは、値段から始まって場所に戻り、また味に進んでいます。読む人は、頭の中で情報を並べ替えながら読むことになります。それが「行ったり来たり」の正体です。
- 書いた順に並べると、思い出した順になってしまう
- 大事な情報を先に出そうとして、前提が抜ける
- 1文ずつ直しても、読みにくさが消えない
- 並べ替えると、つなぎの言葉が合わなくなる
この回では、並べ替えた結果より「なぜその順か」のほうが大事です。理由が分かれば、次からは自分で並べられます。並べ替えだけ受け取ると、毎回頼むことになります。
AIに任せる部分と自分で見る部分
AIに頼みやすい
- 文を並べ替える
- その順にした理由を説明する
- 複数の並べ方を出す
- つなぎの言葉を整える
自分で見る
- その順が自分の伝えたい流れに合うか
- 読み返して、引っかからないか
- どの並べ方を採用するか
- 実際の出来事の順と食い違わないか
進め方
- 文を1文ずつ番号を付けて並べる
- 並べ替えと理由を出してもらう
- 別の並べ方も出してもらう
- 採用する順を自分で決める
- つなぎの言葉を整えてもらう
そのまま使える依頼文
1. 並べ替えと理由を出してもらう
次の5つの文を、初めて読む人に伝わる順に並べ替えてください。
並べ替えた理由も、必ず一行ずつ書いてください。
文章の中身は変えないでください。順番だけ変えてください。
1. 栗どら焼きは1個260円です。
2. 駅から歩いて7分ほどのところにあります。
3. 皮はふんわりして、あんは甘さ控えめです。
4. 平日の午後は空いていて、ゆっくり選べました。
5. 店の前に小さな看板が出ています。
出力例
並べ替えた順: 2 → 5 → 1 → 3 → 4
- 2(駅から7分) — 読む人が最初に知りたいのは場所です。ここが分からないと、あとの情報を受け取る枠がありません
- 5(小さな看板) — 場所の話が続きます。2と5を離すと、位置の話が二度出てきます
- 1(260円) — 場所が分かったあと、何があるかに移ります。商品の登場です
- 3(皮とあん) — 商品が出たあとに、その味を書きます。1と3は同じ商品の話なので隣に置きます
- 4(平日午後は空いていた) — 訪問時の様子です。最後に置くと、読み終わったあとに場面が残ります
2. 別の並べ方も出してもらう
同じ5文で、別の並べ方も出してください。
・先ほどとは違う考え方で並べてください
・その考え方の名前も付けてください
・どちらが良いかは言わなくて構いません
私が選びたいので、2つを比べられる形にしてください。
出力例
並べ方A(場所から): 2 → 5 → 1 → 3 → 4
読む人が情報を受け取りやすい順です。案内文に向いています。
並べ方B(体験の順): 4 → 2 → 5 → 1 → 3
「平日の午後に出かけた」から始めて、実際に歩いた順に並べます。日記や記録に向いています。
違い: Aは読む人が店に行くための情報として並んでいます。Bはハルさんのその日の体験として並んでいます。記事全体が体験の記録なら、Bのほうが本文とつながります。
3. つなぎの言葉を整える
並べ方Bを採用します。
並べ替えたままだと、文のつながりが不自然な箇所があります。
つなぎの言葉を足して、自然に読めるようにしてください。
・文の中身は変えないでください
・「そして」「また」を続けて使わないでください
・足した言葉が分かるように示してください
出力例
「平日の午後、ゆっくり選びたくて出かけました。店は駅から歩いて7分ほどのところにあります。店の前には小さな看板が出ていました。目当ての栗どら焼きは1個260円です。皮はふんわりして、あんは甘さ控えめでした。」
足した言葉
- 1文目に「ゆっくり選びたくて出かけました」 — 元の「空いていてゆっくり選べました」を、出かけた動機として置き直しました
- 4文目に「目当ての」 — 場所の話から商品の話へ移る目印です
接続詞は足していません。文の中に一言入れるほうが、自然につながります。
4. 長い文章の順番を見てもらう
記事全体の段落の順番も見てほしいです。
段落の1行目だけを貼ります。
1. 平日の午後、和菓子店に出かけました
2. 栗どら焼きは1個260円です
3. 駅からの道は、細い商店街を通ります
4. 皮はふんわりして、あんは甘さ控えめでした
5. 店内は空いていて、窓際の席が空いていました
読んでいて引っかかる箇所があれば指摘してください。
問題なければ「引っかかりなし」と書いてください。
出力例
引っかかる箇所が1つあります。
- 3(駅からの道)が、2(商品)のあとに来ています
読む人は2で店に着いた気持ちになっているのに、3で道の話に戻ります。時間が巻き戻る形です。3を1と2の間に移すと、出かける→道→着く→商品、という流れになります
直した順: 1 → 3 → 5 → 2 → 4
5(店内の様子)を先に置くと、店に入ってから商品を見る流れになり、実際の体験の順とも合います。
5. 並べ方の考え方を残す
今日出てきた並べ方の考え方を、次から自分で使える形にまとめてください。
・私が書くのは、店や場所に行った記録の記事です
・並べ方は3つまでにしてください
・それぞれ、どんな記事に向くかを一行で書いてください
出力例
| 並べ方 | 順番 | 向いている記事 |
|---|---|---|
| 体験の順 | 出かける → 道 → 着く → 見る → 味わう | その日の記録。読む人が一緒に歩く形になる |
| 場所から | 場所 → 目印 → 商品 → 味 → 様子 | 店を紹介する記事。行くための情報が先に来る |
| 結論から | 一番伝えたいこと → 理由 → 詳しい説明 → 場所 | 1つの商品に絞った記事。何の話か最初に分かる |
迷ったときは、記事の中心が「体験」か「店」か「商品」かで選んでください。
出力をレビューする
- 並べ替えの理由が書かれているか
- その順が、自分の伝えたい流れに合っているか
- 実際の出来事の順と食い違っていないか
- つなぎの言葉が足された結果、内容が増えていないか
- 通して読んで、引っかからないか
返事が使いにくかったときの直し方
「並べ替えました。3 → 1 → 4 → 2 → 5。この順番が最も読みやすく、読者の興味を引きやすい構成です。ぜひこの順でお試しください。」
理由が書かれていません。「最も読みやすい」と言われても、なぜそうなのかが分からないので、ハルさんは次から自分で判断できません。しかも、味(3)から始まって場所(2)が4番目に来ており、順番の根拠も見えません。
理由が書かれていないので、次から自分で並べられません。
・並べ替えた文それぞれに、なぜその位置なのかを一行ずつ書いてください
・「読みやすい」「興味を引く」ではなく、読む人が何を知りたい順かで説明してください
・おすすめの言葉は不要です
理由を付けて、もう一度並べ替えてください。
「2(場所)を先頭に置きます。読む人は、どこの話かが分からないと他の情報を受け取れないためです。次に5(看板)。場所の話が続くので離しません。次に1(価格)。場所が分かったので、何があるかに移ります。次に3(味)。同じ商品の話なので1と隣にします。最後に4(その日の様子)。読み終わったあとに場面が残ります。」
並べ替えを頼むときは、必ず理由を求めてください。理由がないと、毎回頼むことになります。
小さな練習
自分が書いた文章から、5文ほど取り出してください。段落でも、箇条書きでもかまいません。1文ずつ番号を付けます。
その5文で依頼文1を送り、並べ替えと理由を出してもらいます。理由を読んで、納得できるものが1つでもあれば、その順に直してください。それでこの回は完了です。
次へ進む目安
読みにくいと感じたとき、「順番の問題かもしれない」と疑えたら十分です。ここで作った並べ方の表は、第17回で見出しの流れを作るとき、第31回で記事の構成を作るときに使えます。
次は「メールやDMの返信を整える」へ進みます。今度は、相手がいる文章です。