AIツールの名前を覚えることと、自分の作業が進むことは別です。この回では、ミカさんが「やりたいこと」から使うAIを決めて、迷う時間を減らします。
この回で作るもの
やりたいこと別のAI選び表
自分のやりたいこと3つに、向いているAIの種類と理由をひも付けた小さな表を1枚作ります。次に手が止まったとき、その表を見れば「今日はどれを開くか」がすぐ決まります。
今回の例
ミカさんが、開くアプリを決められずにいる
ミカさんは、道の駅の記事を仕上げようとしています。ところが、AIの紹介記事をいくつか読んだせいで、かえって手が止まりました。名前は聞いたことがあるけれど、どれを開けばいいのか分かりません。
- やりたいこと
- 1. 記事の下書きを作る / 2. アイキャッチ画像を用意する / 3. 道の駅の営業時間を調べる
- 知っていること
- ChatGPTという名前。画像を作るAIがあるらしいこと。検索できるAIもあるらしいこと
- 止まっている理由
- 3つとも同じAIでやれるのか、別々に使い分けるのかが分からない
ツールが多く見えるのは、目的を分けていないから
AIツールの数は確かに多いです。けれど、ミカさんが今日やりたいことは3つしかありません。3つの目的に対して、それぞれ向いているAIの種類は限られています。
迷いが大きくなるのは、「世の中にあるAI全部」と「今日の自分の作業」を同じ大きさで比べてしまうときです。順番を逆にします。先に自分の目的を書き出し、あとからそれに合う種類を当てはめます。
- 目的を書き出す前に、ツール名を調べ始めてしまう
- 「一番いいAI」を決めないと始められない気がする
- 無料でどこまでできるのかが分からず、手が止まる
- 全部覚えないと使いこなせないと思ってしまう
AIに任せる部分と自分で見る部分
AIに頼みやすい
- やりたいこと3つを、作業の種類に分ける
- それぞれに向いているAIの種類を挙げる
- 向いている理由を短く説明する
- その種類が苦手なことも一緒に挙げる
自分で見る
- 実際に使えるかどうか(手元の端末、料金、登録の手間)
- その説明が今の仕様と合っているか
- 今月しばらく使う1つをどれにするか
AIは、機能や料金の説明を過去の情報のまま答えることがあります。この回でAIに頼むのは「種類の選び方」までです。個別ツールの料金や機能は、必ず各サービスの公式ページで確認してください。
進め方
- 今週やりたいことを3つ、短い言葉で書き出す
- それぞれを「文章を作る」「絵を作る」「情報を確かめる」のどれに近いか考える
- AIに、種類と理由と苦手なことを表にしてもらう
- 料金や登録の条件は自分で公式ページを見る
- 今月しばらく使う1つを決めて、表に印を付ける
そのまま使える依頼文
すべてミカさんの3つの目的を入れた形にしてあります。自分のやりたいことに置き換えて使ってください。
1. やりたいことを作業の種類に分ける
私はAI初心者です。
今週やりたいことが3つあります。
1. 道の駅の記事の下書きを作る
2. 記事に載せるアイキャッチ画像を用意する
3. その道の駅の営業時間と定休日を調べる
この3つを、作業の種類で分けてください。
サービス名はまだ出さず、どういう性質の作業かだけを教えてください。
出力例
3つは、性質の違う作業に分かれます。
- 1. 記事の下書き — 文章を作る作業です。正解が1つに決まらず、案を出して選ぶ形が向いています。
- 2. アイキャッチ画像 — 絵を作る作業です。言葉で見た目を指定する必要があります。
- 3. 営業時間と定休日 — 事実を確かめる作業です。案を出す作業ではなく、正しいか間違っているかが決まる作業です。
3のように答えが1つに決まる作業は、AIに書かせるより、出どころを確認する使い方が向いています。
2. 種類と理由と苦手なことを表にする
次の3つの目的について、表を作ってください。
列は「やりたいこと」「向いているAIの種類」「向いている理由」「その種類が苦手なこと」の4つです。
1. 道の駅の記事の下書きを作る
2. 記事に載せるアイキャッチ画像を用意する
3. その道の駅の営業時間と定休日を調べる
製品名や料金は断定しないでください。
種類の説明だけにしてください。
出力例
| やりたいこと | 向いているAIの種類 | 向いている理由 | 苦手なこと |
|---|---|---|---|
| 記事の下書きを作る | 文章を作るAI(対話型) | メモから案を何通りも出せる。長さや言い方の指定にも応じる | あなたが体験していないことを、それらしく書いてしまう |
| アイキャッチ画像を用意する | 画像を作るAI | 色、構図、雰囲気を言葉で指定して絵にできる | 文字を正しく描けないことが多い。細部が現実と違うことがある |
| 営業時間と定休日を調べる | 出どころを示す検索型のAI、または公式サイト | どこに書いてあった情報かをたどれる | 示された出どころが古い場合がある。最終確認は自分で必要 |
3つ目については、AIの答えをそのまま記事に書かず、公式の案内で確かめることをおすすめします。
3. 最初に慣れる1つを選ぶ
私は今月、AIを1つだけに絞って慣れたいです。
使える時間は週に30分ほどです。
やりたいことは、記事の下書き、アイキャッチ画像、営業時間の確認の3つです。
この中で、最初の1か月を1つの種類に絞るなら、どれを選ぶとよいですか。
選ばなかった2つを今月どうするかも書いてください。
出力例
最初の1か月は、文章を作るAIに絞ることをおすすめします。
理由は3つあります。記事の下書きは毎回発生する作業なので練習の回数が多いこと。頼み方を変えると結果がどう変わるかが分かりやすいこと。そして、下書きが進むと記事の公開まで届くことです。
残りの2つは、今月はこう扱います。
- アイキャッチ画像 — 今月は自分で撮った写真を使う。画像AIは来月試す
- 営業時間の確認 — AIを使わず、公式サイトを直接見る
4. 手元の条件で使えるかを詰める
私が使える環境は次のとおりです。
・作業はスマートフォンが中心。パソコンは週末だけ
・当面は無料の範囲で試したい
・アカウントを何個も作りたくない
この条件で、文章を作るAIを選ぶときに、
自分で確認しておくべき項目をリストにしてください。
どのサービスがよいかは決めなくて構いません。
出力例
選ぶ前に、次の項目を公式ページで確認してください。
- スマートフォンのアプリがあるか。ブラウザだけでも使えるか
- 無料で使える範囲。1日の回数や文字数に上限があるか
- 会員登録に何が必要か(メールアドレスのみか、電話番号も要るか)
- 過去の会話が残るか。あとから探せるか
- 入力した内容がどう扱われるかの説明があるか
これらは変更されることがあるため、紹介記事ではなく各サービスの公式ページで確認するのが確実です。
5. 使ってみた感触から選び直す
2週間、文章を作るAIを記事の下書きに使ってみました。
感じたことは次のとおりです。
・下書きは早くなった
・でも、書いていない感想を足されることがあった
・道の駅の名前を間違えられたことがあった
この結果から、使い方をどう変えるとよいか3つ挙げてください。
別のサービスに乗り換える話ではなく、頼み方の見直しとして書いてください。
出力例
- 依頼文の最後に「私のメモにないことは書かないでください」と毎回入れる
- 固有名詞(道の駅の名前、商品名)はAIに書かせず、自分で後から入れる
- 下書きは「完成文」ではなく「見出しと箇条書き」で頼み、文章化は自分で行う
3つとも、乗り換えなくても今日から試せます。特に2つ目は、固有名詞の間違いをそもそも起こさせない方法です。
出力をレビューする
表が出てきたら、そのまま保存する前に次を見ます。
- 自分の3つの目的が、そのまま表に載っているか
- 「苦手なこと」の欄が空になっていないか
- 特定のサービス名が、料金や機能つきで断定されていないか
- 今日の自分が実際にできることになっているか
返事が使いにくかったときの直し方
たとえば、次のような返事が来ることがあります。
「文章生成にはChatGPTが最適です。月額20ドルの有料プランなら制限なく使えます。画像生成も高精度で、検索機能も搭載されているため、これ1つですべて完結します。」
一見、親切に見えます。しかしミカさんにとっては使いにくい返事です。料金と機能を断定していて確認しようがなく、「これ1つで完結」と言われた結果、3つの目的の違いが消えてしまいました。無料で試したいという条件も無視されています。
そこで、こう頼み直します。
今の返事は、料金と機能を断定していて確認できません。
また、私の3つの目的が1つにまとめられてしまいました。
サービス名と料金は書かず、AIの種類だけで答え直してください。
3つの目的それぞれに、向いている種類と苦手なことを分けて書いてください。
「3つは性質が違うため、まとめずに分けます。記事の下書きは文章を作るAIが向きますが、体験していないことを足す弱点があります。アイキャッチは画像を作るAIですが、文字を正しく描けないことが多いです。営業時間は、出どころをたどれる形で調べたうえで、公式の案内で確かめてください。料金と機能は変わるため、各サービスの公式ページでご確認ください。」
小さな練習
今週やりたいことを3つ書き出してください。仕事でも家のことでもかまいません。書き出したら、依頼文2をコピーして、3つの中身だけ自分のものに入れ替えて送ります。
返ってきた表を見て、最後に自分で1つだけ決めます。今月しばらく使うのはどの種類か。決めたら表に印を付けて、この回は完了です。
次へ進む目安
新しいツールの名前を追いかけるより、自分の目的から選べたなら十分です。ここで作った表は、第37回で自分用のプロンプト集を作るときに、分類のもとになります。
次は「入れていい情報と伏せる情報を分ける」へ進みます。使うAIが決まったので、次はそこに何を書いてよいかを整理します。