AIは、知らないことでも自信のある文章で答えることがあります。この回では、ミカさんがAIの回答から「確かめる場所」を切り分けて、記事に載せる前の確認リストを作ります。
この回で作るもの
記事に載せる前の確認リスト
AIの回答のうち、どこが確認の要る事実で、どこが確認の要らない自分の感想かを分けた1枚のリストを作ります。公開前に開けば、確認漏れが目で分かる状態にします。
今回の例
ミカさんが、AIの答えをそのまま貼りそうになっている
ミカさんは、道の駅の記事に施設の情報を足したいと思いました。そこでAIに営業時間を尋ねたところ、はっきりした答えが返ってきました。あまりに具体的だったので、そのまま記事に貼ろうとして、直前で手が止まります。
- AIから返ってきた文
- 「営業時間は9時から18時、定休日は毎週水曜日です。黒ごまソフトは1個400円で、地元産の黒ごまを使った人気商品です。」
- ミカさんが自分で知っていること
- 日曜の午後に行ったこと。黒ごまソフトを食べたこと。香ばしくて甘さは強すぎなかったこと
- 止まっている理由
- 合っている気もするが、どこを確かめればいいのか分からない
なぜ間違いに気づきにくいのか
AIの回答が危ういのは、間違っているときも文章の調子が変わらないからです。「たぶん」「自信がありません」とは書かれません。合っている文と間違っている文が、同じ落ち着いた口調で並びます。
先ほどの回答を見てください。ミカさんが実際に確かめられるのは、黒ごまソフトを食べた感想だけです。営業時間も、定休日も、400円という価格も、「地元産」も「人気商品」も、ミカさんは確認していません。それでも文章としては自然に読めてしまいます。
- 数字が入っていると、正しそうに見えてしまう
- 言い切られていると、確認済みだと感じてしまう
- 自分が知っている部分が合っていると、残りも合っていると思ってしまう
- 全部を疑うのは大変なので、結局そのまま使ってしまう
全部を疑う必要はありません。疑う場所を決めておけば十分です。
AIに任せる部分と自分で見る部分
AIに頼みやすい
- 回答の中から、確認が必要な箇所を抜き出す
- それぞれの確認先の候補を挙げる
- 確認できるまで書かない方がよい表現を指摘する
- 感想として書いてよい部分を分ける
自分で見る
- 実際に公式サイトや店頭で確かめる
- 確認できなかった情報を記事から外す判断
- 確認した日付を記録する
AIに「この情報は正しいですか」と聞いても、確認にはなりません。同じAIが同じ推測を繰り返すだけだからです。確認は、公式サイト、店頭の表示、電話など、AIの外で行います。
進め方
- AIの回答をそのままコピーして手元に置く
- AIに、確認が必要な箇所を抜き出してもらう
- 抜き出された項目に、確認先を書き足す
- 実際に公式サイトや店頭で確かめる
- 確認できなかったものは、記事から外すか、書き方を変える
そのまま使える依頼文
1. 回答から確認が必要な箇所を抜き出す
次の文は、AIから返ってきた回答です。
この中で、私が公開前に確認しないと危ない箇所をすべて抜き出してください。
「営業時間は9時から18時、定休日は毎週水曜日です。
黒ごまソフトは1個400円で、地元産の黒ごまを使った人気商品です。」
抜き出した項目ごとに、なぜ確認が必要かも一行で書いてください。
出力例
- 営業時間 9時から18時 — 季節や曜日で変わることがあり、変更も多いためです。
- 定休日 毎週水曜日 — 祝日や年末年始の扱いが別に決まっている場合があります。
- 1個400円 — 価格は改定されます。時期によって違う可能性があります。
- 地元産の黒ごま — 産地の表示は確認が必要です。誤りは表示上の問題になり得ます。
- 人気商品 — 何をもって人気とするかの根拠がありません。
このAI回答だけを見た場合、確認せずに記事へ入れられる項目はありません。上の5項目は、いずれもAIが推測で作った可能性があります。自分が実際に食べた感想を書く場合は、別に自分のメモを確認してから使います。
2. 確認先つきのリストにする
先ほど抜き出した項目を、確認リストの表にしてください。
列は「確認する項目」「どこで確認するか」「確認できなかった場合どうするか」の3つです。
私が確認に使えるのは、施設の公式サイト、現地の掲示、電話です。
出力例
| 確認する項目 | どこで確認するか | 確認できなかった場合 |
|---|---|---|
| 営業時間 | 公式サイトの施設案内 | 記事に書かず「訪問時は公式サイトでご確認ください」と添える |
| 定休日 | 公式サイト、または電話 | 同上 |
| 黒ごまソフトの価格 | 店頭の価格表示、レシート | 価格を書かず、商品名だけにする |
| 黒ごまの産地 | 店頭の商品表示、公式サイト | 産地には触れない |
| 人気商品かどうか | 確認手段なし | 書かない。「私は気に入りました」と自分の感想にする |
レシートや撮影した店頭写真が残っていれば、価格と商品名はそこから確認できます。
3. 確認できた分だけで書き直す
確認した結果、次のことが分かりました。
・確認できた: 商品名は「黒ごまソフトクリーム」。レシートに380円と記載
・確認できなかった: 営業時間、定休日、黒ごまの産地
この条件で、記事に使える短い紹介文を書いてください。
確認できなかった情報は入れないでください。
私が食べた感想(香ばしい、甘さは強すぎない)は残してください。
出力例
「売店で黒ごまソフトクリームを食べました。レシートには380円とありました。香ばしさがしっかりあり、甘さは強すぎないので、歩きながらでも食べやすい味です。営業時間や定休日は変わることがあるため、お出かけ前に公式サイトでご確認ください。」
確認できなかった営業時間、定休日、産地は本文から外し、代わりに確認をうながす一文を添えました。
4. 自分の記事全体を洗い直す
私が書いた記事の下書きを貼ります。
この中を「私が実際に体験したこと」「確認済みの事実」「確認していない事実」の3つに仕分けてください。
下書き:
日曜の午後、道の駅に立ち寄りました。
駐車場は混んでいて、家族連れが多かったです。
名物の黒ごまソフトクリームは380円。
地元では昔から愛されている定番だそうです。
野菜売り場が広く、朝採れの野菜が並んでいました。
出力例
実際に体験したこと
- 日曜の午後に立ち寄った
- 駐車場が混んでいた、家族連れが多かった(その日の印象)
- 野菜売り場が広かった
確認済みの事実
- 黒ごまソフトクリーム 380円(レシートで確認済み)
確認していない事実
- 「地元では昔から愛されている定番」 — 出どころが不明です。「だそうです」と伝聞にしても、聞いた相手がいなければ書けません
- 「朝採れの野菜」 — 表示を見て確認しましたか。見ていなければ「野菜が並んでいた」までにします
5. 確認の記録を残す
今回確認した内容を、あとで見返せる記録の形にしてください。
半年後に記事を読み返したとき、
どの情報がいつの時点のものか分かるようにしたいです。
確認した内容:
商品名と価格をレシートで確認(訪問当日)
営業時間と定休日は確認できなかった
出力例
確認記録
- 確認日: 訪問した日(記事末尾にも「訪問日時点の情報です」と記載)
- 確認済み: 商品名「黒ごまソフトクリーム」、価格380円 / 出どころ: レシート
- 未確認: 営業時間、定休日 / 対応: 本文に書かず、公式サイトの確認をうながす一文を追加
- 次に見直す時期: 記事公開から半年後。価格は変わりやすいため
記事の末尾に「訪問日時点の情報です」の一文を入れておくと、読む人にも情報の新しさが伝わります。
出力をレビューする
- 感想と事実が混ざったまま「確認済み」に入っていないか
- 確認先が「インターネットで検索」のような曖昧なものになっていないか
- 確認できなかったときの対応まで決まっているか
- 自分がその場で見たことと、AIが足したことが分かれているか
返事が使いにくかったときの直し方
「ご安心ください。記載した情報は一般的な道の駅の営業時間に基づいており、大きく外れることはありません。念のため公式サイトもご確認ください。」
これは確認になっていません。「一般的にはこうだから外れない」というのは推測であり、その道の駅を調べた結果ではありません。「念のため」という言い方も、確認を任意の作業に見せてしまいます。
今の返事は、一般的な傾向をもとにした推測です。
私が知りたいのは、その推測が入っている箇所そのものです。
先ほどの回答のうち、あなたが推測で書いた部分を、
一つずつ「これは推測です」と明示して並べ直してください。
安心させる言葉は書かないでください。
「推測で書いた部分は次の5つです。営業時間9時から18時(推測)、定休日水曜(推測)、価格400円(推測)、地元産(推測)、人気商品(推測)。私はこの施設の実際の情報を持っていません。5項目すべて、公式の案内か店頭でご確認ください。」
この形まで来ると、確認すべき場所がそのままリストになります。ここから第2の依頼文で表にすれば、確認リストの完成です。
小さな練習
自分がAIに何かを尋ねた回答を1つ選んでください。まだなければ、行ったことのある店や施設について「営業時間と定番商品を教えて」と聞いてみます。
返ってきた回答をコピーして、依頼文1を送ります。抜き出された項目のうち1つだけでいいので、実際に公式サイトを開いて確かめてください。合っていたか、違っていたかを1行メモに残せば、この回は完了です。
次へ進む目安
AIの回答を読んだとき、「これは自分が確かめた情報か」と一度立ち止まれたなら十分です。ここで作った確認リストは、第22回で確認項目表として本格的に作り込み、第36回の公開手順書にも組み込みます。
次は「毎回使う小さな型を作る」へ進みます。今回のような確認の依頼を、毎回考え直さなくて済む形にします。