慣れてくると、確認を飛ばすようになります。この回では、ユイさんがこれまでの学びから、自分が守れる範囲のAI利用ルールを作ります。
この回で作るもの
守れる範囲の利用ルール5個以内
「気をつける」ではなく、やること・やらないことがはっきり決まったルールを5個以内で作ります。それぞれに理由を添え、守れなかったときにどうするかも決めます。
今回の例
ユイさんが、確認を飛ばし始めている
ユイさんはAIを使うのが速くなりました。速くなった分、公開までの時間も短くなっています。ただ、最近の記事を読み返して、いくつか気になることに気づきました。
- 最近やってしまったこと
- AIが書いた一文をそのまま公開した(あとで確認していない情報だと気づいた) / 忙しかった週に5観点の点検を飛ばした / 相談のときに、知人から聞いた話を実名のまま入力した
- 学んできた注意点
- 入れていい情報の線引き(第7回) / AIの答えを確かめる(第8回) / 断定しすぎない(第32回) / 5観点の点検(第29回) / 権利物を避ける(第33回)
- 過去に作ったルール
- 「必ずファクトチェックする」「AIの出力は鵜呑みにしない」と決めたが、抽象的で守れているか分からなかった
- 止まっている理由
- 厳しくすると守れず、ゆるくすると意味がない
守れないルールは、抽象的すぎるだけ
ユイさんの過去のルール「必ずファクトチェックする」が守れなかったのは、意志が弱いからではありません。何をしたらチェックしたことになるのかが決まっていないからです。
ルールは、「その場で守れたかどうかが分かる形」にします。「鵜呑みにしない」は判定できませんが、「AIが書いた数字は、そのまま本文に入れない」なら判定できます。守れたか守れなかったかが、あとから見て分かります。
- 判定できない書き方 — 気をつける、意識する、心がける、鵜呑みにしない
- 判定できる書き方 — 入れない、貼らない、必ず開く、〜のときは止める
- ルールが10個を超えると、全部を思い出せなくなる
- 一度も破ったことのないことをルールにしても、意味がない
飛ばしてしまうこと自体は、忙しければ誰にでも起きます。この回で決めるのは、飛ばしても大丈夫なものと、飛ばしてはいけないものの線引きです。全部を守ろうとすると、結局どれも守れなくなります。
AIに任せる部分と自分で見る部分
AIに頼みやすい
- 学んだ注意点からルール候補を出す
- 判定できる書き方に直す
- 重なっているルールをまとめる
- 飛ばしても大丈夫なものを分ける
自分で見る
- 自分が実際に破ったことがあるかどうか
- 守れる数まで絞る判断
- 破ったときにどうするかの決定
- 他人に見せるかどうか
進め方
- 実際にやってしまったことを書き出す
- 学んだ注意点からルール候補を出してもらう
- 判定できる書き方に直してもらう
- 守れる数まで絞る
- 破ったときの対応を決める
そのまま使える依頼文
1. やってしまったことからルール候補を出す
AIを使う自分のルールを作ります。
最近、実際にやってしまったことを書きます。
1. AIが書いた一文をそのまま公開した。あとで確認していない情報だと気づいた
2. 忙しかった週に、公開前の点検を飛ばした
3. 相談のときに、知人から聞いた話を実名のまま入力した
この3つを防ぐルールを、それぞれ作ってください。
「気をつける」「意識する」のように、守れたかどうか判定できない書き方は避けてください。
やること、やらないことがはっきり分かる書き方にしてください。
出力例
- AIが書いた数字と固有名詞は、そのまま本文に入れない
価格、時間、年数、店名、人名は、自分が確認した記録があるものだけを書きます。判定は「その数字の出どころを言えるか」で行えます - 点検を飛ばした週は、公開せずに下書きのまま置く
点検の時間が取れない週があるのは避けられません。飛ばしたときは公開しないと決めれば、点検を省いた記事が世に出ません - 他人から聞いた話は、名前を伏せてから入力する
自分の情報と他人の情報を分けます。判定は「入力欄に他人の名前が入っていないか」で行えます
2. 学んだ注意点を全部ルールにしてみる
これまでに学んだ注意点を並べます。
それぞれをルールの形にしてください。
この段階では絞らず、全部出してください。
・入れていい情報と伏せる情報を分ける
・AIの答えをそのまま信じない
・地域や食文化の記事で断定しすぎない
・公開前に5観点(事実・言いすぎ・誤解・権利・プライバシー)で点検する
・画像で実在のロゴ、人物、キャラクターを避ける
・タイトルで煽り言葉を使わない
・AIに判断そのものを任せない
出力例
- 他人の名前、住所、連絡先は入力しない
- 仕事上知り得た情報は入力しない
- AIが書いた数字と固有名詞は、確認するまで本文に入れない
- 出どころを言えない情報は、語尾をやわらげずに削除する
- 公開前に5観点で点検する
- 画像に、読める文字、実在の人物、ロゴ、キャラクターを入れない
- タイトルに、絶対・必見・衝撃・神などの言葉を使わない
- 公開するかどうかの判断は、AIに聞かずに自分で決める
8個あります。このままだと多く、全部を毎回思い出すのは難しい数です。
3. 守れる数まで絞る
8個は多いので、5個以内に絞りたいです。
次の基準で仕分けてください。
・実際に破ったことがあるもの(残す)
・破ると影響が大きいもの(残す)
・一度も破ったことがなく、影響も小さいもの(外す候補)
・他のルールと重なっているもの(まとめる候補)
私が破ったことがあるのは、3、4、5と、他人の名前の入力です。
決めるのは私がするので、仕分けと理由だけ書いてください。
出力例
残す(破ったことがある)
- 他人の名前、住所、連絡先は入力しない
- AIが書いた数字と固有名詞は、確認するまで本文に入れない
- 出どころを言えない情報は削除する
- 公開前に5観点で点検する
まとめる候補
- 「出どころを言えない情報は削除する」は、5観点の「事実」に含まれます。ただし、これは実際に破ったことがあるため、独立させて残す価値があります
外す候補
- 画像のロゴや人物 — 依頼文の定型文に組み込まれており、毎回自動で外れています。ルールとして覚える必要がありません
- タイトルの煽り言葉 — こちらもプロンプト集の条件に入っています
- 仕事上知り得た情報 — 破ったことがなく、そもそも入力する場面がありません
4個に絞れます。外した3つは、道具の側に組み込まれているため、覚えなくても守られます。
4. 破ったときの対応を決める
4個のルールについて、破ってしまったときの対応を決めてください。
・自分を責める内容は書かないでください
・その場で何をするかだけを書いてください
・公開後に気づいた場合の対応も分けて書いてください
出力例
| ルール | 入力前に気づいたとき | 公開後に気づいたとき |
|---|---|---|
| 他人の名前を入力しない | 入力欄を消して、伏せ字にしてから送り直す | 該当する会話を削除する。記事に名前が出ていれば記事も直す |
| AIの数字と固有名詞を確認まで入れない | その数字に印を付け、確認するまで本文に貼らない | 該当箇所を確認する。確認できなければ削除して更新する |
| 出どころを言えない情報は削除する | その場で削除する | 削除して更新する。更新した日付を記事に残す |
| 公開前に5観点で点検する | 点検の時間がなければ公開せず下書きに戻す | 公開したまま点検を行い、指摘が出たら直す |
公開後に気づいた場合は、記事を消すより、直して更新日を残すほうが読む人に親切です。
5. 1枚にまとめる
4個のルールを、1枚にまとめてください。
条件:
・各ルールに、なぜそう決めたかを一行添える
・破ったときの対応も一行で
・見出しを付けて、読むのに1分かからない長さにする
・戒めや反省の言葉は書かない
プロンプト集と同じ場所に保存します。
出力例
■ わたしのAI利用ルール(2026年8月版)
1. 他人の名前、住所、連絡先は入力しない
理由: 自分の情報ではないため、自分の判断で預けられない
破ったとき: 会話を削除し、伏せ字にして送り直す
2. AIが書いた数字と固有名詞は、確認するまで本文に入れない
理由: 数字は間違っていても文章の調子が変わらない
破ったとき: 確認する。できなければ削除して更新する
3. 出どころを言えない情報は、語尾をやわらげずに削除する
理由: 「〜だそうです」にしても確からしさは上がらない
破ったとき: その場で削除する
4. 公開前に5観点で点検する
理由: 自分の文章の問題は、観点を分けないと見つからない
破ったとき: 点検の時間がなければ公開しない
次に見直す時期: 記事を10本公開したとき
出力をレビューする
- 守れたかどうかを、あとから判定できる書き方か
- 自分が実際に破ったことのあるものが入っているか
- 数が5個以内に収まっているか
- 破ったときの対応が決まっているか
- 読むのに1分かからない長さか
返事が使いにくかったときの直し方
「1. AIを過信せず、常に批判的思考を持つ 2. 倫理観を持って責任ある利用を心がける 3. 情報の真偽を主体的に見極める 4. 読者第一の姿勢を忘れない 5. 技術の進歩に謙虚に向き合う」
立派な言葉が並んでいますが、どれも判定できません。「批判的思考を持つ」を今日守れたかどうか、あとから確かめる方法がありません。ユイさんが実際に破ったこと(数字をそのまま貼った、点検を飛ばした、実名を入力した)も入っていません。
このルールは、守れたかどうかを判定できません。
・「心がける」「持つ」「見極める」のような言葉を使わないでください
・「入れない」「貼らない」「公開しない」のように、動作で書いてください
・私が実際にやってしまった3つ(数字をそのまま貼った、点検を飛ばした、実名を入力した)を必ず含めてください
・精神的な姿勢についてのルールは不要です
4個以内で作り直してください。
「1. 他人の名前、住所、連絡先は入力しない。2. AIが書いた数字と固有名詞は、確認するまで本文に入れない。3. 出どころを言えない情報は削除する。4. 公開前に5観点で点検する。点検できない週は公開しない。」
ルールを頼むと、立派な心構えが返ってくることがあります。「動作で書いてください」「姿勢のルールは不要です」と伝えると、判定できる形になります。
小さな練習
AIを使っていて「これは良くなかったかも」と思った場面を、1つ思い出してください。まだなければ、これから気をつけたいことを1つでかまいません。
その1つで依頼文1を送り、判定できる書き方のルールにしてもらいます。できたルールを、プロンプト集と同じ場所に保存すれば、この回は完了です。1個から始めて大丈夫です。
次へ進む目安
作ったルールを読んで、今日それを守れたかどうか答えられるなら十分です。このルールは、次の第40回で30日を振り返るときに見直します。破れなかったルールは減らし、破ったルールは残します。
次は「30日後に使い方を見直す」へ進みます。この講座の最後の回です。