長く書けたのに、読み返すと何を言いたいのか自分でも分からない。この回では、ハルさんが要点を取り出して、半分の長さに直します。
この回で作るもの
半分の長さにしたリライト案と、削った理由
長くなった下書きを、要点を保ったまま短くします。削った部分の一覧も受け取り、戻すかどうかは自分で決めます。
今回の例
ハルさんの下書きが、長いのに伝わらない
ハルさんは、店内の様子について書きました。300字ほどあります。書いているときは順調でしたが、翌日に読み返すと、何が言いたい段落なのか自分でも分かりませんでした。
- 書いた下書き(298字)
- 「平日の午後に行ったのですが、そのときは店内が空いていて、お客さんは私のほかに一人か二人という感じでした。窓際に席がいくつかあって、そこに座ると通りが見えるようになっているのですが、通りといっても大きな道ではなくて、商店街の細い道です。人がときどき通るくらいで、それを眺めながら待っていました。待っている間、特にすることもなかったのですが、店内も静かだったので、ゆっくりできた感じがしました。お店の方も忙しそうではなく、包み方について説明してくださる余裕がありました。」
- 感じていること
- 削りたいが、どこも自分が見たことなので削るのが惜しい
削るのは、悪い部分ではありません
この段落に、間違いはありません。全部ハルさんが見たことです。それでも読みにくいのは、同じことを違う言葉で何度も言っているからです。
「空いていた」「一人か二人」「静かだった」「忙しそうではなかった」。この4つは、どれも同じ「空いていた」という話です。1つ残せば伝わります。残りの3つは、削っても情報は減りません。
- 言い直し — 同じことを別の言葉で繰り返している
- 説明の説明 — 「通りといっても大きな道ではなくて」のような補足の補足
- あいまいな締め — 「〜という感じでした」「〜できた感じがしました」
- 前置き — 「〜のですが」が続いて、本題が遅れる
短くなった文だけ受け取ると、何が消えたか分かりません。削った部分の一覧をもらって、戻すかどうかは自分で決めます。判断を渡さないことが大事です。
AIに任せる部分と自分で見る部分
AIに頼みやすい
- 要点を取り出す
- 指定した長さに縮める
- 削った部分を一覧にする
- 繰り返しになっている箇所を指摘する
自分で見る
- どの体験を残すかの選択
- 削られて困る部分がないか
- 短くなって印象が変わっていないか
- 最終的な長さの決定
進め方
- 下書きの要点を3つに分けてもらう
- 半分の長さに直してもらう
- 削った部分の一覧を出してもらう
- 戻したい部分を選ぶ
- 語尾を自分で整える
そのまま使える依頼文
1. 要点を3つに分ける
次の下書きの要点を3つに分けてください。
まだ書き直さないでください。何を言っている段落かを整理するだけです。
同じことを繰り返している箇所があれば、まとめて1つに数えてください。
下書き:
平日の午後に行ったのですが、そのときは店内が空いていて、
お客さんは私のほかに一人か二人という感じでした。
窓際に席がいくつかあって、そこに座ると通りが見えるようになっているのですが、
通りといっても大きな道ではなくて、商店街の細い道です。
人がときどき通るくらいで、それを眺めながら待っていました。
待っている間、特にすることもなかったのですが、店内も静かだったので、
ゆっくりできた感じがしました。
お店の方も忙しそうではなく、包み方について説明してくださる余裕がありました。
出力例
- 店が空いていた — 「空いていて」「一人か二人」「静かだった」「忙しそうではなく」の4か所が、すべてこの1点を言っています
- 窓際の席から商店街の細い道が見えた — 「通りが見える」「大きな道ではない」「商店街の細い道」「人がときどき通る」の4か所が、この1点の説明です
- 店の方に包み方を説明してもらった — 1か所だけです
298字のうち、要点は3つでした。1と2は、それぞれ4回ずつ言い直されています。
2. 半分の長さに直す
この下書きを、150字くらいに直してください。
・要点3つは残してください
・言い直しになっている箇所を削ってください
・「〜のですが」を続けないでください
・「〜という感じでした」のようなあいまいな締めをやめてください
・私が書いていないことは足さないでください
出力例
(147字)
「平日の午後、店内は空いていました。お客さんは私のほかに一人か二人です。窓際の席に座ると、商店街の細い道が見えます。人がときどき通るのを眺めながら待ちました。お店の方にも余裕があり、包み方を説明してくださいました。」
要点3つはすべて残っています。言い直しの部分を削ったので、字数が半分になりました。
3. 削った部分の一覧をもらう
今回削った部分を、すべて一覧にしてください。
・削った表現をそのまま書き出してください
・なぜ削ったかを一行ずつ書いてください
・戻したほうがよいと思うものがあれば、印を付けてください
戻すかどうかは私が決めます。
出力例
| 削った表現 | 削った理由 |
|---|---|
| 「静かだったので、ゆっくりできた感じがしました」 | 「空いていた」と同じ内容の言い直しです |
| 「忙しそうではなく」 | 同上。「余裕があり」に含まれます |
| 「通りといっても大きな道ではなくて」 | 「商店街の細い道」と書けば伝わります |
| 「窓際に席がいくつかあって」 | 席の数は、この段落の要点ではありません |
| 印 「待っている間、特にすることもなかったのですが」 | 言い直しではなく、あなたの心の動きです。削ると、待っている時間の感じが薄くなります |
印を付けた1つは、情報の重複ではありません。戻すかどうか、判断してください。
4. 削りすぎた部分を戻す
「待っている間、特にすることもなかった」は戻したいです。
待っている時間の感じを残したいからです。
150字前後は保ったまま、この内容を戻してください。
どこを削って場所を作ったかも教えてください。
出力例
(152字)
「平日の午後、店内は空いていました。お客さんは私のほかに一人か二人です。窓際の席に座ると、商店街の細い道が見えます。特にすることもないので、人がときどき通るのを眺めて待ちました。お店の方にも余裕があり、包み方を説明してくださいました。」
場所の作り方: 「人がときどき通るのを眺めながら待ちました」を「眺めて待ちました」に縮め、その前に「特にすることもないので」を入れました。7字増でおさまっています。
5. 自分の言い直しの癖を知る
今回の下書きから、私が繰り返しやってしまいそうな書き癖を3つ挙げてください。
次から自分で気づけるよう、短い確認文の形にしてください。
直し方も一行ずつ添えてください。
出力例
- 同じことを4回言っていないか
「空いていた」を、混み具合・人数・静けさ・店員の余裕の4通りで書いていました。1つ選んで残す - 「〜のですが」が3回以上続いていないか
前置きが続くと、本題が遅れます。最初の1回だけ残して、あとは文を切る - 「〜という感じでした」で終わっていないか
断定を避けたい気持ちから出る言い方ですが、続くと印象がぼやけます。「〜でした」で言い切るか、「わたしには〜に感じました」にする
3つとも、書いている最中には気づきにくく、翌日読み返すと見つかる種類の癖です。
出力をレビューする
- 要点が3つとも残っているか
- 削った部分の一覧をもらったか
- 削られて困る体験が消えていないか
- 短くなった結果、印象が変わっていないか
- 語尾が自分の言い方になっているか
返事が使いにくかったときの直し方
「平日午後の店内は、静寂に包まれた特別な空間でした。窓の外に広がる商店街の風景を眺めながら過ごすひとときは、日常の喧騒を忘れさせてくれます。丁寧な接客も相まって、心地よい時間を過ごすことができました。」
短くはなりましたが、内容が入れ替わっています。「静寂に包まれた特別な空間」「日常の喧騒を忘れさせてくれる」「心地よい時間」は、ハルさんが書いていません。一人か二人という具体的な人数も、包み方の話も消えました。要約ではなく、別の文章になっています。
短くする過程で、内容が入れ替わっています。
・「静寂に包まれた」「日常の喧騒」「心地よい時間」は私が書いていません
・「一人か二人」という人数と、包み方の話が消えています
・きれいな言い方に直すのではなく、言い直しを削ってください
私が書いた言葉だけを使って、要点3つを残して150字にしてください。
「平日の午後、店内は空いていました。お客さんは私のほかに一人か二人です。窓際の席に座ると、商店街の細い道が見えます。特にすることもないので、人がときどき通るのを眺めて待ちました。お店の方にも余裕があり、包み方を説明してくださいました。」
「短くして」とだけ頼むと、きれいにまとめられて中身が入れ替わります。「言い直しを削ってください」「私が書いた言葉だけを使って」と伝えると、要約ではなく整理になります。
小さな練習
自分が書いた文章から、長くなった段落を1つ選んでください。200字以上あるものが向いています。
その段落で依頼文1を送り、要点を3つに分けてもらいます。同じことを繰り返している箇所が見つかったら、依頼文2で半分にしてもらってください。削った一覧を見て、1つでも「これは戻したい」と判断できたら、この回は完了です。
次へ進む目安
長い文章を見たとき、「同じことを何回言っているか」を数えられたら十分です。ここで見つけた書き癖は、次の第19回で文体メモを作るときの材料になります。
次は「AIっぽい文章を自分の声に戻す」へ進みます。整った文章から、自分の言い方を取り戻す作業です。