地域の食べものには、調べきれない話がついてきます。この回では、ユイさんが前回の構成をもとに本文を書き、断定しすぎている箇所を直します。
この回で作るもの
断定を直した本文と、言い換えの対応表
前回の構成に沿って書いた本文から、確認していない断定を洗い出して直します。あわせて「この言い方はこう直す」の対応表を作り、以降の記事で使い回します。
今回の例
ユイさんが、聞いた話をそのまま書きそうになっている
ユイさんは前回の構成に沿って本文を書きました。書いているうちに、記事に厚みを出したくなり、お店の由来やこの地域の習慣について触れたくなりました。ただ、その情報は自分で確かめたものではありません。
- 書いた本文の一部
- 「このあたりでは昔から、朝に和菓子とお茶を出す文化が根づいています。創業100年を超える老舗で、栗どら焼きは代々受け継がれてきた製法だそうです。地元の人にとっては、秋になると必ず買う定番のお菓子です。」
- 出どころ
- 「朝に和菓子」はSNSで見かけた話。「創業100年」と「代々の製法」はAIに聞いた回答。「秋の定番」は自分の印象
- 確かめたこと
- 厚切りトースト450円、栗どら焼き260円(レシート)。モーニングは10時半まで(メニュー表)
- 止まっている理由
- 由来を書かないと記事が薄い気がするが、確かめずに書くのも怖い
断定を減らしても、記事は薄くならない
ユイさんが不安に思っているのは「由来を削ると記事が薄くなる」ことです。しかし、実際に薄くしているのは断定のほうです。
「創業100年を超える老舗」と書かれた記事と、「窓際の席から通りが見えて、平日の昼前は静かでした」と書かれた記事を比べてみてください。前者はどこの店にも書ける文で、後者はユイさんにしか書けない文です。自分が見たことは、調べた話よりも記事の中身になります。
そのうえで、由来に触れたい場合は書き方を変えます。
- 断定 — 「代々受け継がれてきた製法です」。確認できなければ書けません
- 出どころつきの伝聞 — 「店頭の掲示によると」。掲示を見た場合だけ使えます
- 出どころのない伝聞 — 「〜だそうです」。誰から聞いたか言えないなら、断定と変わりません
- 自分の体験 — 「わたしが行った日は」。いつでも書けます
語尾をやわらげても、情報の確からしさは上がりません。誰から聞いたか、どこで見たかを言えないなら、書かない選択のほうが安全です。地域の文化や作り手の歴史は、間違うと当事者に直接の迷惑がかかります。
AIに任せる部分と自分で見る部分
AIに頼みやすい
- 本文から断定にあたる箇所を抜き出す
- 出どころ別に仕分ける
- 削る案と書き換え案を出す
- 言い換えの対応表を作る
自分で見る
- その情報を自分がどこで知ったかの記憶
- 削るか、確認しに行くかの判断
- 店や地域に失礼な書き方になっていないか
- 削ったあとの本文が自分の体験で埋まっているか
進め方
- 構成に沿って本文を書く
- 断定にあたる箇所を抜き出してもらう
- それぞれの出どころを自分で思い出して書き足す
- 削るか、書き換えるか、確認しに行くかを決める
- 削った分を、自分が見たことで埋め直す
そのまま使える依頼文
1. 断定にあたる箇所を抜き出す
次の本文から、確認していないと書けない箇所をすべて抜き出してください。
語尾がやわらかくても、内容が事実の主張であれば抜き出してください。
書き直しはまだしないでください。
本文:
このあたりでは昔から、朝に和菓子とお茶を出す文化が根づいています。
創業100年を超える老舗で、栗どら焼きは代々受け継がれてきた製法だそうです。
地元の人にとっては、秋になると必ず買う定番のお菓子です。
出力例
- 「昔から、朝に和菓子とお茶を出す文化が根づいています」 — 地域の習慣についての主張です。いつからか、どの範囲かが示されていません
- 「創業100年を超える」 — 年数の主張です。1年でも違えば誤りになります
- 「老舗」 — 何年からを老舗と呼ぶかの基準がありません
- 「代々受け継がれてきた製法だそうです」 — 「だそうです」が付いていますが、誰から聞いたかが示されていないため、主張として読まれます
- 「地元の人にとっては、秋になると必ず買う定番」 — 「必ず」は範囲の主張です。地元の方全員を指すことになります
3文のうち、確認なしで書ける部分はありません。
2. 出どころ別に、扱いを決める
抜き出してもらった箇所の出どころを書きます。
それぞれ「削る」「出どころを書いて残す」「確認しに行く」のどれが適切か教えてください。
理由も一行ずつお願いします。
・朝に和菓子とお茶を出す文化 / SNSで見かけた
・創業100年を超える / AIの回答
・代々受け継がれてきた製法 / AIの回答
・秋になると必ず買う定番 / 自分の印象
出力例
- 朝に和菓子とお茶を出す文化 → 削る
SNSの投稿は出どころとして示せません。地域全体の習慣にあたるため、誤りの影響が広く及びます - 創業100年を超える → 確認しに行く
店の公式サイトや店頭の表示に記載があれば書けます。記載がなければ削ってください - 代々受け継がれてきた製法 → 削る
製法は店の内部の話です。店の方から直接伺った場合のみ、了承を得て書ける内容です - 秋になると必ず買う定番 → 削る、または自分の言葉に変える
「必ず」は他人の行動についての主張です。「わたしは秋に買いたくなります」なら自分の話として書けます
3. 自分が見たことで書き直す
先ほどの3文を、私が実際に確かめたことだけで書き直してください。
確かめたこと:
厚切りトースト450円、栗どら焼き260円(レシートで確認)
モーニングは10時半まで(店頭のメニュー表で確認)
平日の昼前、店内は空いていた
窓際の席から通りが見えた
栗どら焼きは皮がふんわりして、あんは甘さ控えめだった
由来や歴史には触れないでください。
記事が薄くならないよう、見たことを具体的に書いてください。
出力例
「店頭のメニュー表には、モーニングは10時半までと書かれていました。かわりに頼んだ厚切りトーストは450円です。平日の昼前だったからか、店内は空いていて、窓際の席からは通りが見えました。持ち帰った栗どら焼きは1個260円。家で食べると、皮はふんわりしていて、あんの甘さは控えめでした。」
由来と歴史を外した分、価格、時間、席の様子といった具体的な情報が増えています。文字数はほぼ同じです。
4. 言い換えの対応表を作る
地域や食べものの記事で、私が書きがちな断定の言い方を
言い換えの対応表にしてください。
列は「使いがちな言い方」「なぜ危ないか」「確認できたときの書き方」「確認できないときの書き方」の4つです。
今回出てきたもの以外も含めて、8行ほどでお願いします。
出力例
| 使いがちな言い方 | なぜ危ないか | 確認できたとき | 確認できないとき |
|---|---|---|---|
| 創業80年の老舗 | 年数が1年違えば誤り | 公式サイトによると創業78年です | 年数に触れない |
| 昔から愛されている | いつから、誰にかが不明 | 店頭の掲示によると | 削る |
| 地元では定番 | 地元の人全体の主張になる | 店の方に伺ったところ | わたしは気に入りました |
| 栗どら焼き発祥の地 | 諸説あることが多い | 自治体の資料によると、町内で古くから栗菓子が作られています | 削る |
| 秘伝の製法 | 店の内部情報 | 店の方の了承を得て | 削る |
| 必ず売り切れる | 一度の訪問では言えない | 3回訪ねてすべて売り切れでした | わたしが行った日は残っていました |
| 知る人ぞ知る | 確認できない評判 | 使わない | 削る |
| 本場の味 | 比較の基準がない | 使わない | 味の特徴を具体的に書く |
5. 直したあとの本文を通しで見る
断定を直した本文を通しで読んで、次の2点を見てください。
1. 断定が残っていないか
2. 削ったことで、意味が通らなくなった箇所がないか
残っていなければ「残りなし」と答えてください。
書き直しは不要です。指摘だけお願いします。
出力例
1. 断定: 残りなし。価格と時間は確認済みの情報として書かれており、店内の様子は訪問日の記述になっています。
2. 意味が通らない箇所: 1か所あります。「平日の昼前だったからか、店内は空いていて」の部分は、空いていた理由を推測しています。断定ではありませんが、「平日の昼前で、店内は空いていました」と事実だけにすると、より自然です。
あわせて、記事の冒頭で由来に触れていた分の導入がなくなっています。第31回の導入案(乗り過ごした場面から始める)を使うと、入り口が埋まります。
出力をレビューする
- 語尾をやわらげただけで残した断定がないか
- 削った分を、自分が見たことで埋められているか
- 店の内部の話(製法、歴史)を、了承なく書いていないか
- 地域の人全体を指す書き方をしていないか
- 削ったことで、記事の流れが切れていないか
返事が使いにくかったときの直し方
「このあたりでは昔から、朝に和菓子とお茶を楽しむ文化が根づいているといわれています。創業100年を超えるとされる老舗で、栗どら焼きは代々受け継がれてきた製法とのことです。」
語尾だけが変わりました。「いわれています」「とされる」「とのことです」が付きましたが、誰がそう言っているかは書かれていません。読む人には、確認された情報として伝わります。内容は最初の文とほとんど同じです。
語尾をやわらげただけでは、確認したことになりません。
・「いわれています」「とされる」「とのことです」を使わないでください
・出どころを書けない情報は、書き換えずに削除してください
・削除したあと、残った本文だけをそのまま出してください
由来や歴史を残す提案は不要です。
「店頭のメニュー表には、モーニングは10時半までと書かれていました。かわりに頼んだ厚切りトーストは450円です。平日の昼前で、店内は空いていました。窓際の席からは通りが見えます。」
言い換えを頼むと語尾だけが変わることがあります。そのときは「書き換えずに削除してください」と伝えるのが早道です。削ってみて記事が成り立たないなら、それは確認しに行くべき情報です。
小さな練習
自分が書いた記事から、地域や食べものについて触れている段落を1つ選んでください。公開済みのものでもかまいません。
その段落で依頼文1を送り、抜き出された箇所ごとに、自分がどこで知ったかを思い出して書き足します。1つでも「これは削ろう」と決められたら、この回は完了です。
次へ進む目安
「〜だそうです」と書きそうになったとき、誰から聞いたかを言えるか確かめられたなら十分です。ここで作った言い換えの対応表は、第35回でタイトルを付けるとき、第39回で自分のAI利用ルールを作るときに使います。
次は「画像生成の依頼文を作る」へ進みます。本文が固まったので、記事に添える画像の作り方に移ります。